ズールー王国(読み)ズールーおうこく

改訂新版 世界大百科事典 「ズールー王国」の意味・わかりやすい解説

ズールー王国 (ズールーおうこく)

19世紀南アフリカ東海岸部に栄えた王国。19世紀初めズールーZulu族の王となったシャカは,軍事組織と武器を改革し,周辺部族をつぎつぎと統合していった(この時期を〈衝突の時代〉という)。まずムセスワ族,ヌドワンドウェ族を破ってナタール一帯を統合し,1824年にはポート・ナタール(現,ダーバン)のイギリス人入植者と友好関係を結んで鉄砲を入手し,それを使ってさらに王国の版図を広げた。28年異母弟のディンガネDingane(1795ころ-1840)がシャカを殺して王位に就き,さらに領土の拡大をはかった。ディンガネは,37年レティーフに率いられてナタールに進出してきたボーア人をマティワネ・ヒルで撃退したが,翌年後続のA.プレトリウスの一行との血の河の戦で大敗し,40年,弟のムパンデMpande(1800ころ-73)によって退位させられた。ムパンデはボーア人と友好関係を結び,比較的平和な時代が続き,73年甥のセテワヨCetewayo(1825ころ-84)が王位に就いた。79年1月イギリス軍が王国に侵入したが,セテワヨはイサンドルワナの戦でイギリス軍を破った。半年後,イギリスは大軍を派遣し王都ウルンディを占領,セテワヨを捕虜にした。イギリスはズールー族を13の小部族に分割,統治した。86年セテワヨの息子ディヌズールーが蜂起し共和国をつくったが,97年共和国は分割され,ボーア人のトランスバール共和国とイギリスの植民地ナタールにそれぞれ併合された。
ズールー族
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズールー王国」の意味・わかりやすい解説

ズールー王国
ずーるーおうこく

19世紀に南アフリカのナタール地方に興ったズールーZulu人の王国。19世紀初頭、小部族であったズールーの王シャカは、優れた戦闘能力と軍事組織をもち、周辺の諸部族を征服統合して強大な軍事王国を築いた。シャカShakaは1828年弟のディンガネ(在位1828~40)に殺された。ディンガネはナタールのイギリス人と友好関係を結び、移動してきたブーア人のレティーフ一行を38年虐殺したが、後続のA・プレトリウス一行により「血の河の戦い」で大敗し、40年、弟のムパンデによって退位させられた。ムパンデ(在位1840~73)はブーア人と協調し平和な時代が続いた。79年イギリス軍がズールー王国に侵入し、セテワヨ王(在位1873~84)を捕虜にした。イギリス併合後、ズールー王国は13の小部族に分割統治され、それに反対したディヌズールー王(在位1884~1913)はブーア人の援助で86年新共和国を建設したが、共和国はトランスバールに、残りのズールー王国は1897年ナタールに併合された。

[林 晃史]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ズールー王国」の解説

ズールー王国(ズールーおうこく)
Zulu

19世紀初~1897

19世紀南アフリカ東海岸部で覇をなした王国。19世紀初頭中興の祖シャカ王は軍事改革を行い,周辺諸国を平定し,版図を拡大した。1828年シャカを暗殺して王となったディンガネは,37年ブール人移住者を撃退するが,翌年プレトリウスの一行との血の河の戦いで大敗。79年セテワヨ王はイギリス軍をイサンジュワナの戦いで破ったが,大反攻を受けてイギリスに征服された。以後ズールー人は13の部族に分割,統治される。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ズールー王国」の解説

ズールー王国
ズールーおうこく
Zulu

19世紀に南アフリカ東海岸部に栄えた王国
19世紀初めズールー族の王となったシャカが,周辺の部族を次々と破ってナタール一帯を統合して成立。1837年グレート−トレックで進出してきたブーア人と戦ったのち,40年以後,友好関係を結ぶ。1879年,この年2度めの大軍を派遣したイギリス軍に敗れ,13の小部族に分割,統治された。1886年ズールー族が蜂起して共和国をつくったが,97年共和国は分割され,ブーア人のトランスヴァール共和国と,イギリス植民地ナタールにそれぞれ併合された。

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世界大百科事典(旧版)内のズールー王国の言及

【ズールー族】より

…牛を飼育しながら南方に移動し,10~14世紀に南アフリカに達したといわれる。 ズールー族の住む地域はズールーランドと呼ばれたが,ズールー族は19世紀初めのシャカ王の時代に強力な軍事力によってズールー王国を形成した。1830年代にケープ植民地のボーア人たちがイギリスの支配に反発して北方への大移動(グレート・トレック)を開始した結果,ズールー族と衝突し,1838年の血の河の戦でズールー王国は手痛い敗北を被った。…

※「ズールー王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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