セネガル川(その他表記)Le Sénégal

改訂新版 世界大百科事典 「セネガル川」の意味・わかりやすい解説

セネガル[川]
Le Sénégal

西アフリカを流れる代表的河川の一つ。全長1630km,流域面積約44万km2。アフリカでは8番目に長い川で,流域にあたる西アフリカ西部から大西洋沿岸にかけての地方では,古くからアフリカ人国家の興亡,民族移動,ヨーロッパ列強の西アフリカ植民などが行われ,西アフリカ史の舞台としてきわめて重要な意味をもつ川である。

 ギニアフータ・ジャロン山地のピータ付近に源を発し,バファン川として北東流し,マリ領に入ってからは流路を北西に変え,バフラベ付近でバコエ川と合してセネガル川となる。セネガル川は,さらに北西流してマリ,セネガル国境に近いケーズを過ぎ,途中ファレメ川と合し,モーリタニアとセネガルの国境をなして流れ,セネガル北西のサン・ルイで大西洋に注ぐ。サン・ルイは,フランスの西アフリカ植民の拠点として建設された町で,セネガル川はフランスの内陸植民,貿易の通路となった。河口から220kmのポドルまでは大型船の航行が可能で,マリのケーズまでは小型船が航行できる。しかし今日ではセネガルを横断してケーズと大西洋岸のダカールを結ぶ鉄道がそれに代わり,河川交通の役割は小規模なものとなっている。上流地方は14世紀を中心に西アフリカに栄えたマリ帝国版図であったし,19世紀末にはフランスの侵略に対する抵抗運動を組織したサモリ・トゥーレ活躍の舞台でもあった。またサハラ砂漠の南縁を流れるこの川の水は貴重な資源で,流域諸国間で共同開発が検討されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セネガル川」の意味・わかりやすい解説

セネガル川
せねがるがわ
Sénégal

アフリカ西部の大河。ギニア中部のフータ・ジャロン山地に発するバフィン川などが、マリ西部を経て、マリ、セネガル、モーリタニア国境付近で合流し、セネガル川とよばれるようになる。以後セネガル、モーリタニア両国国境を北西ないし西に流れ、セネガル北西端のサン・ルイ付近で大西洋に注ぐ。全長約1500キロメートル。その下流部約900キロメートルほどは、半乾燥地帯の中に細長い農業地帯をつくり、ミレットトウモロコシが栽培されている。最下流部のデルタは、近代的灌漑(かんがい)設備のある米作地帯となっている。河口付近には海岸線に並行して砂嘴(さし)の発達が著しいため、河口はしばしば閉塞(へいそく)され、現在の河口は1850年当時より25キロメートルも南に移っている。そのためサン・ルイ港の機能は著しく低下したが、河港としての機能はなお存続し、275キロメートル上流のポドルとの間は一年中、また8月から10月までの増水季にはさらに660キロメートル上流のマリ領ケーズまで航行できる。

[田村俊和]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セネガル川」の意味・わかりやすい解説

セネガル川
セネガルがわ
Sénégal

アフリカ大陸西部の川。ギニアのフータジャロン山地にバフィング (黒色) 川として源を発して北東流,マリに入って北西に向きを変え,バコイ (白色) 川と合流してセネガル川となる。ファレメ川を合流後は,モーリタニアとセネガルの国境を形成,セネガルのサンルイで大西洋に注ぐ。全長 1633km。北の砂漠地帯と南のステップとの境界をなす。上流では狭い谷を刻み,急流や滝が続くが,マリのカエスから谷は広くなり,セネガルのダガナ下流では肥沃なデルタを形成。乾季にはポドルまで,雨季にはカエスまで遡航可能。西アフリカ奥地への重要な交通路をなし,かつて西アフリカの植民地化はこのルートを通じて行われた。灌漑,水力発電に利用するため,マリ,セネガル,モーリタニア3国によるセネガル川流域開発機構が設けられている。

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