カナダの医学者。オーストリアのウィーンで外科医の子として生まれ,1929年チェコスロバキアのプラハにあるドイツ大学医学部を卒業した。31年アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学に留学,翌32年カナダのマックギル大学に転じ,生化学,内分泌学の研究をつづけた。カナダに帰化し,45年からモントリオール大学の実験医学研究所長兼教授。1936年以降,汎適応症候群general adaptation syndromeという新しい概念を提唱して国際的に高く評価されたがこの中にストレスという言葉が用いられているので,これは一般に〈ストレス学説〉とよばれている。ストレスとは,外界から心身へいろいろな傷害や刺激が加えられると,体内に種々の非特異的な生物反応が起こることをいい,その機序として脳下垂体-副腎系のホルモン分泌が深く関与すると説く。本学説により,原因が異なっても同じ機序が体内に起こり,ストレッサー(ストレスの原因となる刺激)に対する適応異常で病変が発生すると主張され,病因論に新しい見解が提起された。代表的著作に《ストレスStress》(1950),《生活のストレスThe Stress of Life》(1956)などがある。
→ストレス
執筆者:本田 一二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カナダの内分泌学者。オーストリア生まれで、プラハのドイツ大学出身の医師である。若くしてアメリカに渡り、ジョンズ・ホプキンズ大学で研究生活に入り、のちカナダのマックギル大学に移り、1936年ストレス学説を発表した。1945年モントリオール大学の実験医学、外科学の教授となり、多くの医学賞を受けた。
セリエの学説では、生体が細菌感染、薬物中毒、外傷、火傷、寒冷、精神緊張など、物理的、心理的な非特異刺激に当面したとき、その刺激に無関係な一連の個体防衛反応が現れることをストレスと称し、ストレスの原因をストレッサーとよんだ。ストレッサーは下垂体前葉→副腎皮質の内分泌系によって、ストレス反応を演じる。この反応は、生体が環境に適応するための現象で、汎(はん)適応症候群と名づけられ、警告反応、抵抗期、疲労困憊(こんぱい)期の3段階で進行する。この反応が過度になると、ストレス潰瘍(かいよう)のような病的状態になる。
[古川 明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ストレスは元来は機械工学的な用語で,物体を圧縮したり引き伸ばしたりしたときにその物体に生じる〈ひずみ〉を意味するが,1936年H.セリエによってストレス学説が提唱されて以来,この語はしだいに流布し,現今では日常用語化している。その邦訳語は〈負荷〉であるが,ほとんど用いられず,外来語のまま使用されている。…
※「セリエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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