せる(読み)セル

デジタル大辞泉 「せる」の意味・読み・例文・類語

せる[助動]

[助動][せ|せ|せる|せる|せれ|せろ(せよ・せい)]五段動詞の未然形サ変動詞の未然形「さ」に付く。
相手が自分の思うようにするよう。また、ある事態が起こるようにしむける意を表す。「使いに行かせる」「あすは休まてやる」
(「せていただく」「せてもらう」の形で)相手方の許しを求めて行動する意を表す。「言わていただく」「やらてもらう」
(「せられる」「せたもう」の形で)尊敬の意を表す。「殿下は極めてご多忙であらられる」→させる

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精選版 日本国語大辞典 「せる」の意味・読み・例文・類語

せる

  1. 〘 助動詞 〙 ( 活用は「せ・せ・せる・せる・せれ・せよ(せろ)」。五段(四段)活用の動詞の未然形に付く )
    [ 文語形 ]
  2. ( 活用は「せ・せ・す・する・すれ・せよ」。四段活用、ナ行・ラ行変格活用の動詞の未然形に付く )
  3. [ 一 ] 使役の意を表わす。
    1. 他にその動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表わす。
      1. [初出の実例]「二上(ふたがみ)の山に隠れるほととぎす今も鳴かぬか君に聞か勢(セ)む」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇六七)
      2. 「馬の足の及ばうほどは、手綱をくれて歩ませよ。はづまばかい繰って泳がせよ」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. そのような動作、作用が行なわれることを許可する、またはそのまま放任する意を表わす。…のままにする。…させておく。武士ことばとして、受身の「る」の代わりに用いられることがある。
      1. [初出の実例]「こよひ、かかることと、声高にものも言はせず」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
      2. 「僧都〈略〉あやしの臥どへも帰らず、浪に足うちあらはせて、露にしほれて」(出典:平家物語(13C前)三)
    3. 許しを依頼する意を表わす。
      1. [初出の実例]「あなたの顔を描かせていただきたいものですね」(出典:都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉)
  4. [ 二 ] 敬意を表わす。
    1. ( 尊敬を表わす語とともに用いて ) 尊敬の意を強める。
      1. [初出の実例]「仰(おほせ)ごとに〈略〉よく見て参るべき由のたまはせつるになん、参りつる」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「なほ高く吹かせおはしませ。え聞きさぶらはじ」(出典:枕草子(10C終)二四五)
    2. ( 謙譲を表わす語とともに用いて ) 謙譲の意を強める。
      1. [初出の実例]「これ奉らせんと言ひければ」(出典:枕草子(10C終)一三八)

せるの語誌

( 1 )「せる(す)」は「させる(さす)」と接続の上で補いあう関係にあり、意味は同一である。
( 2 )中世(室町時代)以後、活用が下一段化し、現代の「せる」となる。
( 3 )使役の「す」は、平安時代に発達したものであるが、上代にも、[ 一 ]の挙例「万葉集」の「聞かす」のほか、「知らす」「逢はす」など、その萌芽とみられる例がある。他動詞語尾の「…す」と密接な関係を持つものであろう。
( 4 )敬語としての用法は、使役の表現が動作の間接性を表わすところから転じたものと見られる。単独には用いられず、尊敬語の動詞、「のたまふ」「賜ふ」に下接し、また、連用形「せ」が「給ふ」「おはします」「まします」などに上接する。敬語を重ねることによって高い敬意を表わすもので、特に「せ給ふ」「のたまはす」などは、天皇皇后やそれに準ずる人にだけ用いられる。
( 5 )現在では「行幸あらせられた」など、「られる」と重ねて改まった尊敬の気持を表わす場合のほかは、敬意を表わすのには用いられない。
( 6 )「す」(「さす」も同じ)は漢文訓読語としては用いられず、仮名文学作品にもっぱら用いられた。漢文訓読文での使役の表現には、上代以来の「しむ」が用いられている。
( 7 )動詞の活用語尾に準ずるものとして、接尾語とする説もある。


せる

  1. 〘 動 〙 ( 終止形連体形だけが見られる ) する。行なう。
    1. [初出の実例]「『アゼどふせる』『ハテおれがせることがある。見され』」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)三)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「せる」の意味・わかりやすい解説

セル
Scelle, Georges

[生]1878.3.19. アブランシュ
[没]1961.1.8. パリ
フランスの国際法学者。 1906年法学博士,ディージョン,ジュネーブの大学教授を経て,34年パリ大学教授。 L.デュギーの流れをくみ社会連帯を基礎とした国際法理論,特に国家の法人格を否定して国際法の主体をもっぱら個人とする特異な見解を展開した。国連国際法委員会では,仲裁手続に関する規則の立案・作成に貢献した。主著『国際法概論──原則と体系』 Précis de droit des gens,principes et systématique (1932~34) ,『国際公法講義』 Cours de droit international public (48) 。

セル
Szell George

[生]1897.6.7. ブダペスト
[没]1970.7.30. クリーブランド
ハンガリー生れのアメリカの指揮者。ピアニスト,作曲家として出発し,のち指揮者に転じる。 1917年ストラスブール歌劇場の指揮者を振出しに,プラハダルムシュタットなどで活躍。 24~29年ベルリン国立歌劇場第1指揮者,その間 1926年ベルリン音楽学校教授にも就任。 33年渡英し,ロンドン・フィルハーモニー交響楽団を指揮,37~39年スコットランド管弦楽団常任指揮者。第2次世界大戦のため 39年渡米,46年以来クリーブランド管弦楽団の常任指揮者となり,同楽団をアメリカ一流の楽団に引上げた。アメリカ最高の指揮者と仰がれる。古典から現代まで,そのレパートリーは広い。

セル

梳毛 (そもう) 和服地の一つで,オランダ語セルジ sergeの略語。経糸,緯糸とも純毛梳毛糸を用い,一般に平織で,柄は霜降り,縞,絣,プリント。純毛セルのほか,絹セル (絹または絹毛交織) ,半セル (綿毛交織) ,綿セル (綿織物) などがある。用途は男女とも合着にする単 (ひとえ) の着尺地,袴地など。

セル
cell

浮選機などで構成単位となっている容器または容器区画。槽と呼ぶこともある。浮選機を例にとれば,一式の浮選機は通常数個ないし十数個のセルから成っている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「せる」の意味・わかりやすい解説

セル(George Szell)
せる
George Szell
(1897―1970)

ハンガリー出身のアメリカの指揮者。ブダペストに生まれ、幼時からウィーンで育ち、ピアノと指揮に才能を発揮した。1917年クレンペラーの後任としてストラスブール市立歌劇場指揮者に就任、以後ベルリン、プラハ、グラスゴー、ハーグなどで歌劇場やオーケストラの指揮者を務めた。39年アメリカ滞在中に第二次世界大戦が始まったため、とどまってメトロポリタン歌劇場を本拠に活躍、この間アメリカに帰化し、46~70年クリーブランド管弦楽団の音楽監督となり、この楽団を世界最高の水準に引き上げた。70年(昭和45)5月同楽団と来日したが、その2か月後に死去。オーケストラの厳格な訓練と統御で知られ、手塩にかけたオーケストラを自在に使いこなして、健康的で豊麗な音楽を生み出してみせた。

[岩井宏之]


セル(織物)
せる

セルは、もとサージsergeから転訛(てんか)したもので、セルジスともいい、経緯(たてよこ)ともに梳毛(そもう)糸を使って平織、あるいは斜文に織った広幅織物である。無地染めのほか、杢(もく)糸を使ったり、縞(しま)や絣(かすり)、あるいは捺染(なっせん)したりしたものもある。明治時代からモスリンとともに和服用として一般に使われてきたもので、セルを使い和服に仕立てることをセル仕立てともいった。第二次世界大戦前までは初夏の単衣(ひとえ)として着られた。俳諧(はいかい)では夏の季語。

[角山幸洋]

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