セルフメディケーションの狭義の意味は、自己の健康に自己が最終責任をもつという理念に沿って、一般用医薬品(大衆薬、OTC薬=Over-The-Counter drugともいう)の使用などで自己治療することである。対象となる分野は、医師の診療を受けなくても治療が可能な軽度の病気「軽医療」で、かぜ、頭痛、眼精疲労、胃の痛み・もたれ、便秘、下痢、打ち身、筋肉痛、虫さされなどである。
広義の意味では、健康維持、疾病予防の方法を食事、運動、休養にまで広げて、「自分で自分の体の健康管理を行うこと」をいう。対象となるものには、生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病など)の予防がある。
[和田高士]
「自分の健康を自ら守る」というセルフメディケーションの基本概念のルーツは、人類の歴史とともに発生していたと考えられる。すなわち、病を治すことは、人類始まって以来の課題であり、本能的行為に始まり、生活習慣の集積から薬草使用へと進化し、これがセルフメディケーションの始まりとなった。
[和田高士]
日本では自己責任という概念は、医療法、医師法、薬事法などの関係法規によって育ちにくい状況にある。つまり、国民皆保険制度により、自らの健康問題や病気を医師あるいは医療機関にゆだねることによって医療が保障されるという、依存型の医療にあるからである。しかし、自分の健康に強い関心をもつ国民が増えるとともに、薬局や薬店の薬剤師等による適切なアドバイスのもとで、一般用医薬品を利用するセルフメディケーションが広がりつつある。また、医療用医薬品が一般用医薬品として販売される品目(スイッチOTC)も増え、より効果のある医薬品が購入できるようになってきている。食品においては、一定以上の効果が確認されたものについては、消費者庁の認可による「特定保健用食品」として販売され、その市場は拡大しつつある。
[和田高士]
日本は世界に類をみないスピードで少子・高齢化が進んでいる。長寿社会は裏を返せば、医療費の増大という問題を含んでいる。国民医療費は1999年度(平成11)に30兆円を突破し、2004年度には32兆円を超えた。厚生労働省の試算では、このままでいくと2025年には65兆円にもなると推計され、医療保険制度は破綻(はたん)の危機を迎えている。この対策として、現在の医療制度を見直し、セルフメディケーションの発想をベースとした新たな構造を構築する必要がある。セルフメディケーションが充実することで、医師は重症の患者の治療にあてる時間を増やすことが可能となる。
[和田高士]
生活習慣病を予防して国民の健康を守ると同時に、国民医療費の伸びを抑制する観点から、2008年4月、特定健康診査と特定保健指導が導入された。
[編集部]
『宗像守著『セルフメディケーションが日本を救う――少子高齢化時代の健康国家づくりと医療費軽減を両立するシステム』(2002・商業界)』▽『セルフメディケーション推進協議会監修、和田高士編著『セルフメディケーションで治す未病145』(2004・じほう)』▽『Guidelines for the Regulatory Assessment of Medicinal Products for Use in Self-Medication(2000, WHO, Geneva)』
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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