セントビンセントおよびグレナディン諸島(読み)セントビンセントおよびグレナディンしょとう(英語表記)Saint Vincent and the Grenadines

改訂新版 世界大百科事典 の解説

セントビンセントおよびグレナディン諸島 (セントビンセントおよびグレナディンしょとう)
Saint Vincent and the Grenadines

基本情報
正式名称セントビンセントおよびグレナディン諸島Saint Vincent and the Grenadines 
面積=389km2 
人口(2009)=11万人 
首都キングズタウンKingstown(日本との時差=-13時間) 
主要言語=英語 
通貨=東カリブ・ドルEast Caribbean Dollar

カリブ海の東方,小アンティル諸島内のウィンドワード諸島南部に位置する30以上の島々からなる群島国家。主島のセント・ビンセント島は東西15km,南北30kmの火山島で,北部にそびえる活火山スフリエール山(1284m)は,1902年の大爆発後,79年4月に再び噴火し,全島の3分の1が火山灰におおわれるなど,大きな被害があった。グレナディン諸島は約600の小島サンゴ礁から成り,南部の島々はグレナダ領土となっている。人口の大半がセント・ビンセント島に住む。首都はキングズタウン。住民の大部分がアフリカ系黒人かその混血で,ほかに少数の白人,アジア系住民,先住民カリブ族系住民がいる。公用語は英語だが,住民の多くは英語系のクレオール語を使っている。宗教は英国国教会,メソジスト,カトリックなどが主である。

 1498年にコロンブスらにより〈発見〉されたが,ヨーロッパ人による植民活動は18世紀まで先住民カリブ族の抵抗によって阻まれ,この間に近隣の島々などから到達した逃亡奴隷がカリブ族と混交してブラック・カリブと呼ばれるようになっていた。18世紀に入るとフランス人入植者たちが奴隷制プランテーションで砂糖の生産を拡大するようになったが,1763年にイギリスの領土となり,フランスによる占領などを経て,83年のベルサイユ条約によってイギリスに帰属することが確定した。イギリスの植民地として20世紀にいたり,1958年には西インド諸島連合の結成に参加したが,62年に連合は解体,69年に内政自治権を獲得,79年7月のイギリス議会の承認を経て,同年10月27日独立を達成した。イギリス連邦内の自治国で,イギリス女王を元首とする立憲君主制をとり,女王の名代である総督が形式上統治している。一院制の議院内閣制をとり,議会は公選議員15,総督指名議員6の計21名で構成される。国際関係ではカリブ共同体,カリブ開発銀行,東カリブ諸国機構に加盟しているほか,司法は東カリブ裁判制度に属している。

 セントビンセントの経済は農業に大きく依存しており,バナナ,ココナッツ,カカオ,野菜類などが生産されているが,バナナの生産のみで労働人口の60%,輸出の50%を占めている。しかしハリケーンなどの被害を受けやすく,主な輸出先であるEUが優遇措置撤廃を検討している中で,政府は軽工業や観光産業の振興による産業の多角化を進めてきた。この結果,最近では外貨の獲得において観光業がバナナの輸出を上回るようになっている。一方,食料や消費財は輸入に依存し,近隣の島々同様,貿易は慢性的赤字である。輸出入とも旧宗主国のイギリス,アメリカ,トリニダード・トバゴのシェアが大きい。1995年の1人当りGNPは2280ドルでカリブ海諸国の中では低い水準にある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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