日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
セント・ビンセント・グレナディーンズ
せんとびんせんとぐれなでぃーんず
Saint Vincent and the Grenadines
中央アメリカの西インド諸島東部、小アンティル諸島中のウィンドワード諸島にある国。面積389平方キロメートル、人口10万4000(2005年推計)、10万9000(2009年推計)。首都キングズタウン。主島のセント・ビンセント島とその南方のグレナディーンズ諸島の北部3分の2からなる。セント・ビンセント島は火山性の島で、この北部にあるスーフリエール火山(1220メートル)は1979年に爆発し、島の3分の1が火山灰に覆われた。気候は熱帯性であるが、北東貿易風帯にあるため、夏でも比較的しのぎやすい。
1498年コロンブスの第三次航海によって「発見」されたが、1762年イギリスが入植地を建設するまで植民地化されなかった。その後一時フランスに占領されたが、1783年のベルサイユ条約によってイギリス領となった。1797年に先住民のカリブ人を追放し、ポルトガル人とインド人を労働者として受け入れた。1958~1962年に西インド諸島連邦の一部となり、1969年にイギリスの自治領となった。1979年10月にイギリス連邦の一員として独立した。1980年国連加盟。
政体はイギリス国王を元首とする立憲君主制。議会は一院制で議席数は21、そのうち選挙(公選)で15議席を選出し、イギリス国王の代理である総督が6議席を選任する。任期は5年。議院内閣制で、行政の長である首相は公選議員の多数派代表(多数党党首)が総督の任命によって就任し、内閣を組閣する。
農業が経済活動の中心で、バナナ、葛粉(くずこ)、コプラと綿花が主要輸出品である。観光も重要な産業で、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の撮影地になったことをきっかけに、この国は世界中に知られるようになった。建設業と観光施設の改善によって経済発展が進められている。通貨は東カリブ・ドル(ECドル)。
人口の66%はアフリカ系黒人で、20%は混血、6%はインド人、4%は白人、2%はカリブ人、2%はその他である(2008)。公用語は英語だが、フランス語と先住民言語の混合語であるパトワ語(クレオール語)も使われる。宗教はキリスト教(イギリス国教会、プロテスタント、カトリックなど)が大半を占めている。グレナディーンズ諸島のベクウイ島の住民は国際捕鯨委員会の先住民生存捕鯨枠内でザトウクジラを捕獲することが認められている。
日本とは、1980年(昭和55)に外交関係を開いた。貿易では、日本へ水産物(冷凍)などを輸出し、日本から自動車、タイヤなどを輸入している。
[菅野峰明]