ソルベー会議(読み)ソルベーかいぎ(その他表記)Solvay Conferences on Physics

改訂新版 世界大百科事典 「ソルベー会議」の意味・わかりやすい解説

ソルベー会議 (ソルベーかいぎ)
Solvay Conferences on Physics

ドイツの物理化学者W.H.ネルンストの提案に基づいて,ベルギーの工業化学者E.ソルベースポンサーとなって発足した物理学国際会議。第1回は1911年,〈放射の理論と量子〉をテーマにブリュッセルで開催された。この会議には,議長を務めたH.A.ローレンツのほか,M.プランク,A.アインシュタイン,A.J.ゾンマーフェルト,E.ラザフォード,M.キュリー,P.ランジュバン,H.ポアンカレなど約20人の当代一流の科学者が参集して,量子論意義をめぐって熱心に討議した。この会議を通じて量子論に対する理解は著しく深まり,広まった。この後,13年に第2回,21年に第3回と会議は不定期に招集されていたが,24年の第4回会議以降,3年ごとに定期的に開催されるようになった(第2次大戦前後は15年間中断)。

 第1回会議のテーマとして量子論が取り上げられたことにもみられるように,ソルベー会議は量子論および量子力学の形成と発展に多大の役割を果たした。とくに27年,〈電子光子〉をテーマに開かれた第5回会議では,N.ボーアとアインシュタインとの間で,物理学理論の本質をめぐって激しい論争が展開されたが,結局,量子力学に対しては,ボーアらによる確率論的な解釈コペンハーゲン解釈と呼ばれる)が妥当性を有することが承認されるに至った。第2次大戦後も,会議のテーマとして,ミクロ領域を対象とする原子核素粒子物理学から,マクロな領域を対象とする宇宙物理学に至るまで,会議開催時点で最も先端的な話題が選ばれ討議され,物理学の発展に寄与している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソルベー会議」の意味・わかりやすい解説

ソルベー会議
そるべーかいぎ

物理学および化学に関する国際会議。ベルギーの工業化学者E・ソルベーは、量子論が提起した物理学上の基本的問題に関心をもち、問題解決に真に寄与しうる国際会議を提唱した。その提唱に基づき、1911年、ブリュッセルに、アインシュタイン、M・キュリー、ランジュバン、ラザフォードらの国際的に著名な物理学者が招待され、「輻射(ふくしゃ)理論と量子」をテーマに報告し、討論しあった。少人数による討論を重視する会議の形式はその後のソルベー会議を特徴づけるものとなった。第2回(1913)以降は、国際科学委員会を組織し、その委員会がテーマと招待者を決定するようになった。日本からは湯川秀樹(ひでき)、朝永(ともなが)振一郎、坂田昌一(しょういち)、佐藤文隆(ふみたか)がこれまでに招待されている。22年には化学に関するソルベー会議が開催されるようになった。ソルベー会議の経過は、ベルギー独立150周年を記念して開かれた第17回化学会議(1980)において報告されている。

[慈道裕治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソルベー会議」の意味・わかりやすい解説

ソルベー会議
ソルベーかいぎ
The Solvay Conference on Physics

食塩からナトリウムを取出す工業的方法を発明し,富を得たベルギーの E.ソルベーの援助によって 1911年から物理学の未解決の困難な問題について討議することを目的として,ブリュッセルにおいて小人数で開催されている国際会議。最近では3年に1度ずつ開かれている。特に量子力学の形成期と原子核物理学の開花期には,その発展に大きく寄与した。

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