ゾンバルト(読み)ぞんばると(英語表記)Werner Sombart

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゾンバルト」の意味・わかりやすい解説

ゾンバルト
ぞんばると
Werner Sombart
(1863―1941)

ドイツ経済学者、社会学者。ベルリン大学で学び、G・シュモラー、A・ワーグナー、W・ディルタイ、K・マルクスなどの影響を受けた。大学卒業後1885~1888年イタリアのピサ遊学。1888~1890年ブレーメン商工会議所顧問。1890年からブレスラウ大学、1906年からベルリン商科大学、1917年からベルリン大学教授を歴任し、1931年ベルリン商科大学名誉教授。1904年以来、M・ウェーバーらと『社会科学および社会政策雑誌』Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitikの編集にあたり、社会政策における倫理的立場をも重要視するシュモラーらの新歴史学派と争い、社会政策の科学性を確立しようとした。

 初期の著作『社会主義と社会運動』Sozialismus und sozial Bewegung im 19. Jahrhundert(1896)では多分にマルクス主義共感を示していたが、晩年はマルクス主義に批判的になり、同書の改訂版『プロレタリア社会主義』Der proletarische Sozialismus(1924)では、民族基礎を置く社会主義を主張するようになった。経済学者としては、理論を軽視する歴史学派、自然科学的方法に依拠する当時の理論的経済学のどちらに対しても批判的で、「経済体制」Wirtschaftssystemという概念を中心に、理解社会学的な角度から理論と歴史とを総合した経済社会の全体的把握の道を切り開こうとした。その面での代表作として『近世資本主義』全2巻Der moderne Kapitalismus(1902)、『高度資本主義Das Wirtschaftsleben im Zeitalter des Hochkapitalismus(1927)があり、またその方法論をより詳細に展開したものに、晩年の『三つの経済学』Die drei Nationalökonomien(1930)がある。

[早坂 忠]

『小島昌太郎訳『三つの経済学』(1933・雄風館書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゾンバルト」の意味・わかりやすい解説

ゾンバルト
Sombart, Werner

[生]1863.1.19. ハルツ,エルムスレーベン
[没]1941.5.18. ベルリン
ドイツの経済学者,社会学者。ベルリン大学に学び,G.シュモラー,A.ワーグナー,K.マルクス,W.ディルタイらの影響を受けた。 1885~88年ピサ遊学。 88~90年ブレーメン商工会議所顧問。 90年ブレスラウ大学,1917年ベルリン大学,31年ベルリン商科大学の各教授を歴任。 04年以来 M.ウェーバーらと『社会科学および社会政策雑誌』 Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitikを編集,社会政策の科学性の確立に努めた。初期の著作『社会主義と社会運動』 Sozialismus und soziale Bewegung im 19. Jahrhundert (1896) ではマルクスに準拠していたが,晩年にはマルクス主義に批判的となり,同著の改訂版『プロレタリア社会主義』 Der proletarische Sozialismus (1924) では,民族に基礎をおく社会主義を主張するにいたった。一方,今日ゾンバルトの名が知られているのは,その独特な資本主義理解,あるいは資本主義生成についての見解による。ゾンバルトは,消費の規模が質的にも量的にも拡大していくことが資本主義の生成にとって必要条件だとし,特に奢侈 (しゃし) の役割を重視した。こうしたゾンバルトの資本主義理解は,ウェーバーの資本主義生成についての見解とは大きく異なっている。従来,日本においてはウェーバーの影響が大きく,必ずしもゾンバルトの主張が受入れられてきたとは言いがたいが,ウェーバーのテーゼが再検討を迫られている今日,ゾンバルトに対する再評価も必要とされよう。主著として『近世資本主義』 Der moderne Kapitalismus (02~27) ,『ブルジョワ』 Der Bourgeois (13) ,『奢侈と資本主義』 Luxus und Kapitalismus (13) などがある。

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