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1920年代から第二次世界大戦の終結まで、ドイツの民族運動を指導し、33年以後は政権を担当した「国民社会主義ドイツ労働者党」(略称ナチス、ナチ党)の思想原理。この時期にイタリアや日本でも登場したファシズム、全体主義の一種。したがって、ナチズムは、ファシズムに共通の性格をもち、反個人主義、反自由主義、反民主主義、反議会主義、反社会主義、反マルクス主義などを標榜(ひょうぼう)するとともに、国家すなわちファシズム政権が政治・経済のあらゆる面にわたってコントロールすること、また国益が私益に絶対的に優位することを主張する。しかし、ナチズムの特色は、とくにその民族の概念にみられる。ナチ党の「血と大地」「血の純潔」「ゲルマン民族の優秀性」という民族概念は、国内的にはユダヤ人排撃の思想となり、対外的には他民族を侵略してその支配下に置かんとする軍国主義を正当化する思想となった。
[田中 浩]
『田中浩著『カール・シュミット』(1992・未来社)』
国民社会主義(Nationalsozialismus[ドイツ])の通称。ヒトラーとナチ党のイデオロギーないし支配体制をさす。最も徹底した形態と内容のファシズム。戦闘的な反マルクス主義を基調とし,ヴァイマル民主主義を否定する「指導者原理」を主張,ゲルマン民族至上主義なる「神話」と戦争を賛美,青少年をはじめ大衆の組織化を図った。第一次世界大戦後の経済危機で没落した中産階級の「怨恨」の反映として,一定の資本主義批判を伴ったが,やがてそれもヴェルサイユ体制の修正をめざす排外的ナショナリズムの中に解消され,特に1934年以降はドイツ帝国主義の最も残虐,収奪的な表現となった。極端な反ユダヤ主義の人種理論にもとづく東方帝国の建設というその非合理主義的観念は,第二次世界大戦におけるドイツの戦争目的とされた。そのために合理的近代技術が用いられたことは,事態を一層非人道的なものにした。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これと似た意味をもち,この言葉誕生の背景となった用語としては大衆社会mass society,全体主義社会totalitarian society,一次元社会one‐dimensional societyなどが考えられる。あらゆる制度を一本化して頂点で結び,上からの徹底した管理をねらったのはナチズムの等制Gleichschaltungであったが,ナチスはこの体制を実施するうえでソ連の一党独裁制に悪い意味で学んだといわれる。そこで,1930年代から第2次大戦後にかけての大衆社会論は,ナチズムを典型とするファシズムとともにある程度までスターリン主義をも念頭におきながら,現代的独裁制のもとにおける支配者の徹底的な大衆管理を批判した。…
… しかし,この戦争は次のような独特な性格ももっていた。第1に,この戦争は基本的に,ドイツのナチズム,イタリアのファシズム,日本の軍国主義が行った対外膨張とそれに対する抵抗の戦いであったことである。対外膨張とその阻止のために,正規の軍事力が使われたほか,征服された地域では支配者およびその協力者に対する抵抗運動も展開された。…
…ファシズムが最初に出現し,また早くファシズム政権が成立したイタリアでは,他国に先がけてすでに1920年代に反ファシズムのさまざまな運動が繰り広げられる。その後,30年代前半にドイツ・ナチズムの台頭と権力獲得に際して,反ファシズムは統一戦線あるいは反戦平和の思想と深い結びつきをもつようになり,またイタリア,ドイツをこえて国際的な広がりをもつに至る。30年代半ばになると,ファシズムに対抗,阻止するものとして人民戦線が提起され,人民戦線が反ファシズムの主要なあり方とみなされる時期が生じる。…
…イタリアでは,第1次大戦直後の混乱のなかで,1922年10月31日に早くもムッソリーニ内閣が成立したが,その後29年に始まる世界恐慌を背景に,33年1月30日ドイツではヒトラー内閣が生まれた。20年代から30年代にかけてヨーロッパの広範な諸国にこのムッソリーニの〈ファシズム〉やヒトラーの〈ナチズム〉に類似した政治的急進主義の動きが芽生えていたが,第2次大戦の緒戦におけるドイツの軍事的勝利にも支えられて,42年夏には,この種の動きが全ヨーロッパを支配してしまうようにさえみえた。この政治的急進主義が当時はその先頭を切ったイタリア・ファシズムにちなんで〈ファシズム〉と呼ばれたし,そのことを踏まえて,第1次大戦と第2次大戦の間の時期を〈ファシズムの時代〉とする呼び方もあるほどである。…
…スターリン体制のもとでは,シオニズムに対する批判,すなわち人種論に基づく集団的帝国主義と祖国をもたないコスモポリタン主義のイデオロギーという批判がユダヤ系市民に対する迫害と結びつき,革命以来活躍してきたユダヤ系共産党員,市民の多くがその犠牲となった。
[ナチズムとユダヤ人]
これまでにみてきたところから明らかなように反ユダヤ主義は決してナチス独自のイデオロギーではない。それどころかいわゆるユダヤ人の物理的抹殺をもって〈ユダヤ人問題の最終解決〉と称する表現さえ19世紀末のドイツに見いだすことができる。…
※「ナチズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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