改訂新版 世界大百科事典 「タイワンザル」の意味・わかりやすい解説
タイワンザル
Macaca cyclopis
霊長目オナガザル科の旧世界ザル。台湾だけに生息するサル。岩山にすむという昔の情報からイワザルと呼ばれることもある。太くて長い尾を除くとニホンザルにそっくりだが,系統的にはアカゲザルやアッサムモンキーにより近縁である。体格は,ほぼアカゲザル(頭胴長約50cm,体重7~8kg)程度。毛は密で長く,くすんだオリーブ色ないし暗灰色で,手足や尾の先は黒い。台湾の中央山地と南東部の海岸に近い山地に生息している。生態や社会に関しては未知の部分が多い。岩山にとくに多いという情報は疑わしく,断片的な観察によれば,樹上生活の傾向が強いらしい。雑食性で果実,芽,花のほかに昆虫やカタツムリなども食べる。50頭ほどの複雄群や雄グループ,ハナレオス(離れ雄)が野生状態で見られており,人工的に放飼いした例では,アカゲザルやニホンザルとよく似た社会が形成されている。年1回,9月から1月の交尾期には顔としりが赤くなる。動物園でよく見られる。
執筆者:黒田 末寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報