改訂新版 世界大百科事典 「ダベナント」の意味・わかりやすい解説
ダベナント
William Davenant(D'Avenant)
生没年:1606-68
イギリスの劇作家,劇場経営者。共和制時代から王政復古期にかけての劇壇の中心人物の一人。1638年,桂冠詩人に任じられ,ピューリタン革命においては王党派についたため,43年,チャールズ1世からサーの称号を与えられる。1642年,革命によって劇場が閉鎖され,せりふ劇の上演が不可能になって以後は,音楽劇と称して自作《ロードス島の包囲》(1656初演)などを上演した。この作品はイギリス最初のオペラとみなされることがある。60年,王政復古に際して劇場経営の勅許を得,リンカンズ・インズ・フィールズに公爵劇場を開場,T.ベタートンを中心とする劇団の本拠とした。劇場史的には,エリザベス朝の張出舞台から近代的な額縁舞台への橋渡しをし,大がかりな装置や舞台機構を採り入れた。作品には革命以前に発表した宮廷仮面劇もあるが,むしろ王政復古以後に観客の好みに合わせると称してシェークスピア劇を改作したことが重要である。
執筆者:喜志 哲雄
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