ダンチク(その他表記)Spanish reed
great reed
Arundo donax L.

改訂新版 世界大百科事典 「ダンチク」の意味・わかりやすい解説

ダンチク
Spanish reed
great reed
Arundo donax L.

暖地海岸や近海地の川辺等に生えるイネ科の大型の多年草ヨシタケともいう。横にはった根茎があり,ふつう大群をなし,茎は粗大で高さ2~5m,太さ1~3cmもあり,多数の節があり,2~3年くらい生き続け,基部は木質化する。葉は茎の節につき,葉鞘(ようしよう)は茎の節間より長い。葉身は幅広く長い線形で,長さ50~70cm,幅は2~5cm,上半部は垂れて,先端はしだいにとがる。秋に開花する。円錐花序は茎の先端につき,大型で長さは30~70cm,直立し,外形は長楕円形で,やや紫色を帯び,多数の枝を出して無数の小穂を密生する。小穂は長さ1cm前後で,3~5個の小花があり,花穎(かえい)には短い芒(のぎ)があり,背面に絹毛が生えている。本州の関東以西,四国,九州,琉球に見られ,アジア南部から地中海地方まで広く分布して,変種が多い。白い斑入葉をもつ栽培品をセイヨウダンチクvar.versicolor Stokesという。

 ダンチクの茎は非常に硬くなり,その光沢ある皮部はハンドバッグ等の編料にされたり,表皮下の厚壁組織の多い竹のような部分を削って作ったリードクラリネットサクソフォーンに一番適しているという(竹製のリードより道管が太く空気を通しやすい)。その他,琉球や中国南部では草ぶき屋根の材料とし,製紙料にもなりうる。根茎は芦竹根(ろちくこん)と呼ばれ,中国で薬用にされる。グラミンgramineやドナクサリンdonaxarineと呼ばれるアルカロイドを含有する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダンチク」の意味・わかりやすい解説

ダンチク
だんちく / 葮竹
[学] Arundo donax L.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。ヨシタケ(蘆竹)ともいう。根茎は太く、稈(かん)は高さ2~4メートル、径2~4センチメートルになる。葉は長さ約60センチメートル、先端は長く糸状にとがる。8~11月、稈頂に大形の円錐(えんすい)花序をつける。小穂は長さ0.8~1.2センチメートル、3~5個の小花がある。包穎(ほうえい)は披針(ひしん)形で護穎より短い。護穎は背面に長毛があり、基盤と小軸は短い。海岸の湿地に生え、本州から沖縄、小笠原(おがさわら)諸島、および中国、インド、地中海沿岸に分布する。

[許 建 昌 2019年8月20日]

文化史

ヨーロッパでは茎をクラリネットやバグパイプなどの楽器や釣り竿(ざお)に利用した。アメリカの原住民はマットや住居の格子に使った。別名のヨシタケは、葉がヨシ(アシ)に、茎がタケに似ることによる。ヨシの漢名の一つは葭(か)で、ヨシタケは葭竹と綴(つづ)れるが、それを葮竹と書き違い、ダンチクの名が生じたのではないかと、牧野富太郎は推測した。葉に白い斑(ふ)がある品種フイリノセイヨウダンチク(シマダンチク)A. donax L. var. versicolor Kunthは明治10年代に日本に導入され、観賞用に栽培される。

[湯浅浩史 2019年8月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダンチク」の意味・わかりやすい解説

ダンチク(暖竹)
ダンチク
Arundo donax; giant reed

イネ科の大型の多年草で,ヨシタケともいう。日本の暖地およびヨーロッパ南部に分布し,暖地の海辺または河岸などの砂地に群生する。根茎は短く匍匐し,年を経ると木質化する。稈は叢生し,中空で強硬であるが,2~3年で枯れることが多い。淡緑色で大型の葉が互生し,葉の基部は鞘となり茎を包む。秋に稈の頂部に,円錐花序をなして紫色の花を多数つける。チクとはいうがササ,タケの類ではない。

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百科事典マイペディア 「ダンチク」の意味・わかりやすい解説

ダンチク

関東以西,沖縄まで海岸や河原に生え,中国,インド,地中海沿岸地方まで分布するイネ科の大型多年草。茎は叢生し,高さ3m内外,長さ60cm,幅5cmもの剣状葉を多くつける。秋に出る花序は長さ60cmに達する。園芸的には,斑入り品種フイリノセイヨウダンチク(シマダンチクとも)が切花のほか,庭に植えられたりドライフラワーにもされる。

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