ダート(読み)だーと(英語表記)Raymond Arthur Dart

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダート」の意味・わかりやすい解説

ダート
だーと
Raymond Arthur Dart
(1893―1988)

オーストラリアのブリズベン生まれの解剖学者、人類学者。クイーンズランド大学およびシドニー大学で医学を学んだ。1920年、南アフリカヨハネスバーグのウィトワーテルスランド大学の解剖学教授となり、1924年にベチュアナランドボツワナ)のタウングで発見された人類化石研究によって世界の注目を集めた。この化石は幼児と思われる高等霊長類の頭骨で、その一般的形態はチンパンジーの子供に似ている。しかし、ダートは頭骨形態や歯の詳細な比較研究を行った結果、これが100万年以上前のヒトの祖先であろうと考え、1925年、アウストラロピテクス・アフリカヌスAustralopithecus africanusと命名した。当初は反対意見も多かったが、R・ブルーム、ロビンソンJohn Talbot Robinson(1923―2001)などの協力により、ダートの予見が正しかったことが証明された。現在は東アフリカでも多くの同類の化石が発見され、アウストラロピテクスの年代は約400万年前までさかのぼることが確かめられている。1953年、アウストラロピテクスの発見、およびその研究に対して、人類学者の最高の名誉であるバイキング・メダルが贈られた。

埴原和郎 2018年11月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダート」の意味・わかりやすい解説

ダート
Dart, Raymond Arthur

[生]1893.2.4. ブリスベーン
[没]1988.11.22. ヨハネスブルク
オーストラリア生れの南アフリカの人類学者。エリオット=スミス師事。のち南アフリカ共和国に渡り,ウィトワーテルスラント大学教授。 1924年ケープ州タウングの石灰採石場出土の小児頭骨に人類的特徴を認め,アウストラロピテクスと命名。この小児骨をヒト科に属させることに世界の学会は批判的であったが,R.ブルーム,L.リーキーらの協力によって,その後に発見が続き,アウストラロピテクスはヒト科の一つの属としての地位を確立した。

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