改訂新版 世界大百科事典 「チゴユリ」の意味・わかりやすい解説
チゴユリ
Disporum smilacinum A.Gray
温帯林の林床に普通に生えるユリ科の多年草。地下茎による栄養繁殖をさかんに行い,しばしば群生する。多年草とはいっても冬には親個体は枯死し,地下茎の先端だけが生き残って翌年地上部を出す。このような生活形は擬似一年草と呼ばれている。茎は高さ20~35cmで,ふつう枝分れしない。茎の先に1~2個の白色の花をつける。花被片は長さ12~16mm,基部にみつ腺がある。花期は5~6月。漿果(しようか)は8~9月に熟し,黒色。日本全土に広く分布し,朝鮮,中国にもある。
チゴユリ属Disporumは北アメリカと東アジア,東南アジアに隔離分布し,約20種がある。日本にはチゴユリのほかに,日本全土に広く分布するホウチャクソウD.sessile D.Donなど4種がある。チゴユリ属の花には,ホウチャクソウのように花被片が筒状に集まる種と,チゴユリのように花被片が平開する種がある。チゴユリ型の花にはいろいろな小型昆虫が訪れて花粉を媒介するが,ホウチャクソウ型の花にはとくにマルハナバチ類が訪花する。花色には黄色の種(キバナチゴユリ,キバナホウチャクソウ)や紫色の種(トウチクランなど)があり,これらは観賞用にしばしば栽培される。チゴユリとホウチャクソウの若葉は山菜として食用にされる。ホウチャクソウは漢方で根茎を干したものが咳止めとして用いられる。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報