日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャム」の意味・わかりやすい解説
チャム
ちゃむ
Cham
ベトナム南部の山岳地帯とカンボジアのメコン川流域に住む民族。チャム人は2世紀末から17世紀末までベトナム南部にチャンパ王国(林邑(りんゆう)、占城(せんじょう))を建てて栄えたが、ベトナム人に追われ、一部は山地へ、一部はカンボジアに逃れた。チャンパはインド文化の影響を強く受けていたが、カンボジアに入ったチャム人はほとんどイスラム教徒になった。ベトナムに多い非イスラム教徒チャムは、ヒンドゥー教的要素とアニミズム的要素の混ざった伝統的宗教を保持している。カンボジアのチャムは漁師、造船業者、水夫などで活躍し、また農民、商人としてクメール人と共存している。しかし、イスラム教徒であることが、彼らの民族的独立性の維持を助けている。
ベトナムのチャムはベトナム文化の影響を強く受け、ほとんどベトナム化した人が多いが、高地のチャムは独自の文化をいまも保持している。イネを栽培し、スイギュウ、ニワトリなどを飼っている。出自は母系。
[板橋作美]