日本映画。1980年(昭和55)、鈴木清順(すずきせいじゅん)監督。青地(藤田敏八(ふじたとしや))とその友人の中砂(原田芳雄(はらだよしお)、1940―2011)、二人が出会った芸者小稲(大谷直子(おおたになおこ)、1950― )と、中砂の妻の園(大谷直子二役)、そして青池の妻の周子(大楠道代(おおくすみちよ)、1946― )の錯綜(さくそう)した関係を描く。日活時代に独自の美意識を発揮していた鈴木だが、彼の作品を難解とした日活社長によって解雇された。その鈴木の美意識が遺憾なく発揮された一作。目に入ったゴミを舌でなめとる描写や、腐りかけの桃を食べる描写など、官能的な表現が鮮烈。また、生と死の境界の曖昧(あいまい)さを描こうとしている作品でもある。本作は半球ドーム状の特設映画館を用い、各地で移動上映された後、一般上映されるという特殊な興行形態がとられた。
[石塚洋史]
『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』▽『佐藤忠男著『日本映画史3』増補版(2006・岩波書店)』▽『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 下』(社会思想社・現代教養文庫)』▽『文芸春秋編『日本映画ベスト150――大アンケートによる』(文春文庫ビジュアル版)』
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