改訂新版 世界大百科事典 「ツィンツェンドルフ」の意味・わかりやすい解説
ツィンツェンドルフ
Nikolaus Ludwig, Graf von Zinzendorf
生没年:1700-60
ヘルンフート兄弟団の設立者,指導者。ドレスデンに生まれ,敬虔派の祖母の意向でハレのペダゴギウムで学ぶ。この地の敬虔主義の諸事業に深く感銘し,その運動に参加した。政治家として立ったが,その間ボヘミアから信仰のため追放されたモラビア兄弟団を自領内のヘルンフートに保護し,その指導者ともなる。彼は世界的教化を使命となし外国伝道を推進した。みずからもヨーロッパ,イギリス,アメリカへ伝道旅行をなす。イギリスのメソディスト運動への影響は多大である。その信仰はキリストの受難と死を強調するもので,宗教における感情の位置を尊重する。ここに意志性に傾く倫理的なハレ派との対立も生じたのである。この感情重視の宗教観はシュライエルマハーを介して19世紀キリスト教に根本的作用を及ぼした。ヘルダー,キルケゴール,ビスマルクらも彼の影響を受けている。
執筆者:常葉 謙二
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