日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツリガネムシ」の意味・わかりやすい解説
ツリガネムシ
つりがねむし / 釣鐘虫
繊毛虫門少膜綱縁毛目の1属Vorticellaの総称。釣鐘形の細胞体と柄(え)からなり、柄の末端で水中の植物、石、ごみ片などに付着生活をする。数十種が知られ、大部分は淡水産で、海産種もある。体の上部にある周口部を取り巻く繊毛の運動で生じた水流を利用して餌(えさ)(主として細菌類)を取り込む。細胞体長は種によって異なり40~200マイクロメートルで、大核(多くはC字形)と小核をもつ。柄長は細胞体の3~8倍。柄内部にはスパスモネームspasmonemeとよばれる収縮性繊維が螺旋(らせん)状に走行する。そのため、種々の刺激に応じて収縮すると柄はコイル状に巻かれる。この収縮・弛緩(しかん)はCaイオン濃度の変化で引き起こすことができ、その運動にはATP(アデノシン三リン酸)は不要。好環境下では二分裂して1本の柄に二つの娘(じょう)細胞が一時的に生ずる。続いて両娘細胞は遊泳幼生に変態して柄を離れ、水中の適当な付着物上で柄を分泌して親となる。種により付着パターンが違い、群生と単独生活する種とに分けられる。不等分裂で生じた大配偶子と小配偶子による有性生殖もする。悪環境下では柄を残したままシストcystを形成する。近年、汚水の指標生物として原生動物が重要視されており、とくに定着性の縁毛類が利用されている。淡水の代表種には、大形のカンパヌラV. campanula、コンワラリアV. convallaria、モニラータV. monilata、ミクロストマV. microstomaなどがある。海産種にはマリナV. marinaなどがある。
[堀上英紀]