日本大百科全書(ニッポニカ) 「テルル鉛鉱」の意味・わかりやすい解説
テルル鉛鉱
てるるえんこう
altaite
鉛のテルル化物。方鉛鉱と同じ岩塩構造をもち、そのテルル置換体に相当する。セレン置換体セレン鉛鉱とも同構造で、普通このように金属元素が共通している場合は、テルル化物のほうが比重が大きくなるが、セレン鉛鉱の計算比重は8.28となり、わずかの差ではあるが逆転する。同様の現象は水銀の場合にもみられ、閃亜鉛鉱構造のセレン水銀鉱tiemanniteの計算比重8.24は、同構造のテルル水銀鉱coloradoiteの8.09より大きい。自形は立方体あるいは立方体と正八面体の聚形(しゅうけい)(複合立体)が報告されているがきわめてまれ。
深所生成の熱水鉱脈型金・銀鉱床に産し、正マグマ性白金族元素鉱床に少量伴われることもある。日本では、岩手県気仙(けせん)郡住田(すみた)町野尻鉱山(閉山)の熱水鉱脈型金・銀鉱床で、ヘッス鉱、ペッツ鉱などの金・銀テルル化鉱物と方解石‐石英脈中に共存する。ほかに共存鉱物として、自然金、自然銀、自然テルル、自然アンチモニー、テルルアンチモニー、方鉛鉱、黄鉄鉱、安四面銅鉱、硫砒(りゅうひ)鉄鉱、閃(せん)亜鉛鉱、黄銅鉱、石英、菱(りょう)鉄鉱などがある。
同定は方鉛鉱よりずっと銀白味の強い色調であることによる。大きな比重。劈開(へきかい)は方鉛鉱ほど明らかでない。硬度は方鉛鉱より微妙に高い。英名は産地の一つサボディンスキーSavodinskii鉱山のあるロシア、アルタイ山脈にちなむ。
[加藤 昭 2017年12月12日]