日本大百科全書(ニッポニカ) 「デビリン」の意味・わかりやすい解説
デビリン
でびりん
devilline
カルシウムと銅の含水塩基性硫酸塩鉱物。デビル石という和名もある。クテナス石ktenasite(化学式(Cu,Zn)5[(OH)3|SO4]2・6H2O)‐デビリン群鉱物を形成する。なお本鉱の化学組成はCaCu4[(OH)3|SO4]2・3H2Oであるが、そのなかのCu(銅)の4分の1程度をZn(亜鉛)に置換すると化学組成はCaCu3Zn[(OH)3|SO4]2・3H2Oとなり、空間群が異なった別鉱物サーピエリ石serpieriteとなる。自形は擬六角板状の結晶をなすが、多く皮膜状。銅鉱床中、接触交代鉱床あるいは方解石を脈石とする鉱脈型鉱床の酸化帯に産し、鉱山の採掘活動後の産物post-mining originとして、坑木上に着生するものもある。日本では鹿児島県串木野(くしきの)市(現、いちき串木野市)串木野鉱山の酸化帯から産し、岐阜県加茂(かも)郡白川町黒川鉱山(閉山)からも産出が確認されている。
共存鉱物は、方解石、石膏(せっこう)、くじゃく石、藍(らん)銅鉱、青鉛鉱、ブロシャン銅鉱、ラング石langite(Cu4[(OH)6|SO4]・2H2O)、ポスンジャク石posnjakite(Cu4[(OH)6|SO4]・H2O)など。同定は青味がかった淡緑色であることによる。しかしそのわりに条痕(じょうこん)ははっきり着色している。ほかに劈開(へきかい)面上の真珠光沢に特徴があり、非常にもろい。ただサーピエリ石とは区別しにくい。命名はフランスの化学者アンリ・エティエンヌ・サン・クレール・デビユHenri Étienne Sainte-Claire Deville(1818―1881)にちなむ。したがって和名はデビユ石とすべきであるという意見もあるが、英語の発音はデビリンとなるので、これをそのまま和名とした。
[加藤 昭 2017年12月12日]