このままでは「適正手続」を意味するにすぎないが、一般にはアメリカ合衆国憲法(修正5条・14条)中の、国や州が市民の生命・自由・財産を奪うときに守らなければならない手続due process of lawの略語として用いられ、「適法手続」または「法の適正な手続」と訳されることが多い。合衆国憲法中のデュー・プロセス条項は、マグナ・カルタ(39条)に由来し、当初はもっぱら手続にかかわる規定と受け止められていた。1880年代以降は、手続が単に法律に従えばよいのではなく、それが実体的正義にかなっていなければならないと解され、経済保守主義の立場を補強し、ニューディール政策に代表される社会化立法の推進を妨げた。その結果、1937年、合衆国最高裁判所が判例を変更して、公権力による経済規制を認めるに至っている。現在では、社会権規定をもたぬ合衆国憲法にあって、人権保障の最後のよりどころであると重視されている。
日本国憲法(31条)は「何人(なんぴと)も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と、前記のデュー・プロセス条項に似た規定をもつために、両国憲法間の異同をめぐる議論がある。確かに日本国憲法の規定は財産権に言及していないし、法文に「適正な」の文言を欠くなど重要な相違があり、両者の同一視に反対する見解もみられるが、通説は日本国憲法第31条を人身の自由の総則規定と解したうえで、科刑手続と実体は適正な内容の法律によって定められなければならないばかりか、同条が罪刑法定主義の採用まで推測させると説く。しかも、少年法上の保護処分、精神保健福祉法上の措置入院など、身体的拘束を伴う行政的措置に本条が適用される余地まで認めるように、その今日的意義はきわめて大といえよう。
[佐々木髙雄]
『松井茂記著『アメリカ憲法入門』第5版(2004・有斐閣)』
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