デルボー(読み)でるぼー(その他表記)Paul Delvaux

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デルボー」の意味・わかりやすい解説

デルボー
でるぼー
Paul Delvaux
(1897―1994)

ベルギー画家リエージュに近いアンテイトに生まれる。最初建築を、ついで絵画ブリュッセルの王立美術学校に学ぶ。ベルギーの表現主義イタリア形而上(けいじじょう)絵画のデ・キリコ、同じベルギーのシュルレアリスト、マグリットたちの影響を受け、1930年代、とくに37年前後から、裸婦なかば架空の建築あるいは都市の組合せという、アングル風の異常な静寂さに満ちた古典主義的構図の独特の様式が確立される。裸婦は、ある見本市(いち)の衛生博物館での蝋(ろう)人形から触発されたものであり、建築物は、古代廃墟(はいきょ)、現代風の室内、電車や駅のある現代都市のイメージから出発しているが、裸婦像と同様、彼の内面的な夢を示している。50年に母校の教授、65年には校長となり、79年、王立アカデミー会員に選ばれた。

中山公男

『中原佑介解説『現代世界の美術19 デルヴォー』(1986・集英社)』

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百科事典マイペディア 「デルボー」の意味・わかりやすい解説

デルボー

ベルギーのシュルレアリスムの画家。アンタント生れ。ブリュッセルで初め建築を,次いで絵画を学ぶ。初期には後期印象派や表現主義の影響下にあったが,1934年にブリュッセルで開かれた展覧会でキリコの作品を知り,その後の作風を決定づけた。1937年にはマグリットらによるベルギーのシュルレアリスト・グループに参加。遠近法が強調された書割のような風景に,夢遊病者を思わせる無表情な裸婦を配した作品で知られるほか,骸骨をモティーフとした作品も手がけている。死とエロスが交錯する独自の世界を一貫して描いた。

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改訂新版 世界大百科事典 「デルボー」の意味・わかりやすい解説

デルボー
Paul Delvaux
生没年:1897-1994

シュルレアリスムの代表的な画家。ベルギーのアンタイトに生まれ,ブリュッセルの美術学校で古典絵画を学ぶ。1925年ブリュッセルで最初の個展を開く。キリコの影響をうけ,独特のパースペクティブをもつ空間(しばしば古代都市)のなかに,無表情の裸婦が夢遊病者のようにたたずむ光景を細密に描き,エロスと死の交錯する情念をかきたてる。代表作に《シレーヌの村》(1942)などがある。ブリュッセルに住んだ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デルボー」の意味・わかりやすい解説

デルボー
Delvaux, Paul

[生]1897.9.23. リエージュ,アンタイト
[没]1994.7.20. フルネ
ベルギーの画家。特異なシュルレアリスムの画家と目されている。ブリュッセルの美術学校で学び,新印象主義,表現主義の影響を受けた。その後,イタリア,フランスを旅行中に G.キリコやシュルレアリストの作品に刺激され,シュルレアリスム展に出品するようになる。古典的なスタイルを活用して,月光の降り注ぐ荒涼とした風景のなかを夢遊病者のように彷徨する裸婦をテーマに描く。代表作『不安な町』 (1941) 。

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