デーベライナー
でーべらいなー
Johann Wolfgang Döbereiner
(1780―1849)
ドイツの化学者。貧しい家に生まれ、薬種店徒弟、渡り職人を経て、1803年より薬品の製造販売などに従事する。この間化学や鉱物学を独学し、いくつかの論文を発表。1810年ザクセン・ワイマール・アイゼナハ公国イエナ大学の化学・薬学助教授(1819年より教授)に招かれ、終生指導的な科学技術者(1820年より公国顧問官)として公国に尽くした。1817年ストロンチウム酸化物の当量がカルシウムとバリウム酸化物の当量の平均値に等しいことを指摘した。1829年にはこうした関係を他の元素群(三つ組)にもみいだした。これは元素の相互関係を初めて原子量(当量)によってとらえたもので、後のメンデレーエフの周期律発見に向かう第一歩となった。また1823年には新しく製した白金末によってアルコールや水素を常温酸化し、接触触媒反応という重要な新分野を開拓した。これはただちに自らの考案による「デーベライナーの灯」や「ユージオメーター」に応用された。
[肱岡義人 2018年9月19日]
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デーベライナー
Johann Wolfgang Döbereiner
生没年:1780-1849
ドイツの化学者。イェーナに近いホーフ出身。薬局修業のかたわら化学を独修し薬品顔料工場を経営した。1810年イェーナ大学の化学と薬学の助教授に就任,以後死ぬまでこの地で実用化学・分析化学的な多方面にわたる研究をした。17年には性質の似るストロンチウム,カルシウム,バリウムで,後の2元素の酸化物の当量の算術平均が酸化ストロンチウムの当量に等しいこと(いわゆる三つ組元素関係)を指摘して,類似元素関係を表すパラメーターに当量・原子量をはじめて導入し,元素の周期律発見の端緒となった。29年には,さらに多くの三つ組元素の組を指摘した。また白金の触媒作用についての詳細な研究を行い,デーベライナー・ランプの考案に至った。
執筆者:梶 雅範
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
デーベライナー
Döbereiner, Johan Wolfgang
[生]1780.12.13. バイエルン,ホーフアンデルザーレ
[没]1849.3.24. イェナ
ドイツの化学者。薬剤師の弟子などを経てイェナ大学で化学を修め,のちに同大学で教えた (1810) 。文豪ゲーテの友人。粉末状にした白金の接触作用の研究を行い,触媒研究に先鞭をつけるとともに,デーベライナーランプといわれる自動点火器を発明した。塩素,臭素,ヨウ素の3種の元素は互いに性質が類似していることに気づき,同じことがカルシウム,ストロンチウム,バリウムの場合にも,硫黄,セレン,テルルの場合にもいえることを見出した。この三組元素の概念はのちの D.メンデレーエフの元素の周期表作成の先駆をなす試みであった。
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世界大百科事典(旧版)内のデーベライナーの言及
【周期律】より
…このようになると,元素の性質は個々独立のものでなく,その間にさまざまな相関性があることもわかってきた。たとえばドイツの[J.W.デーベライナー]は,元素のうちには[塩素Cl‐臭素Br‐ヨウ素I],[カルシウムCa‐ストロンチウムSr‐バリウムBa],[鉄Fe‐コバルトCo‐ニッケルNi]のように3個1組でよく似た性質を示すものが少なくないことを認め,1829年これらを〈三つ組元素triad elements〉として元素を分類することを試みた。その後フランスのシャンクルトアAlexandre Émile Béguyer de Chancourtois(1819‐86)は,さらに新しい規則性,すなわち原子を原子量に従って配列していくと,よく似た性質の元素がほぼ等間隔に現れることを発見し,これに基づいて元素を円柱のまわりにらせん状に配列した独創的な図表〈地のらせんvis de terre〉を1862年に発表した(図1)。…
【ライター】より
…1779年ころにイタリアのペイラL.Peylaが,ガラス管に蠟(ろう)を入れ,一方の端末にリン,硫黄,油を詰め,ガラス管を折ることで発火する〈トリノのろうそく〉を発明した。また1823年にはドイツの化学者[J.W.デーベライナー]が水素発生装置のガラス容器の口に白金海綿(海綿状にした白金)をつけ,これに水素を吹きつけると発火する点火器をつくり,28年にはドイツとイギリスで約2万個が使われていたという。その他,電気を利用するものなど各種の器具が考案されているが,1904年にオーストリアの化学者[ウェルスバハ]によるセリウムと鉄の[発火合金]の発明で,いわゆるライター石を用いるフリント式ライターが可能になった。…
※「デーベライナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」