改訂新版 世界大百科事典 「トサミズキ」の意味・わかりやすい解説
トサミズキ
Corylopsis spicata Sieb.et Zucc.
早春,葉に先立って香気のある黄色の花を総状に垂らすマンサク科の落葉低木で,庭木や生花用に広く植えられる。高さ2~3m,密に分枝して叢生(そうせい)する。小枝は淡灰褐色でやや太く雁木状に立つ。一年枝,葉の裏および花序軸は星状毛に覆われる。葉は互生し,ややいびつな卵円形または倒卵円形で,長さ4~11cm,基部は心形で,7~9対の側脈が縁の波状の歯牙端に達する。3~4月,短枝の先から7~12花の総状花序を垂らす。花は黄色で,基部に苞葉1枚と小苞葉2枚があり,半下位の子房上に卵状披針形の萼片,さじ形で長さ約9mmの花弁,花弁と等長のおしべおよび2裂した仮雄蕊(かゆうずい)が5本ずつと,2本の細長い花柱がつく。9~10月に径7~8mmの球形の蒴果(さくか)を結び,裂開して2個の黒い種子をはじき飛ばす。自生は高知市付近の蛇紋岩や石灰岩地に知られるのみである。1860年代にイギリスに入りヨーロッパに広まった。
トサミズキ属Corylopsisは東アジアからヒマラヤに20種近くが知られる。日本ではほかにヒュウガミズキ(別名イヨミズキ)C.pauciflora Sieb.et Zucc.が,トサミズキよりふつうに植えられる。総状花序は2~3個の花からなる。北陸西部と近畿北部に分布する。四国・九州の一部と台湾にもあるというが,はっきりしない。欧米でも,トサミズキ属の植物は早春に開花する花木として珍重され,多く栽植される。繁殖は株分けや挿木により,土壌をえらばないが,適湿な深い砂質土壌を好む。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報