トレーシー(英語表記)Spencer Tracy

改訂新版 世界大百科事典 「トレーシー」の意味・わかりやすい解説

トレーシー
Spencer Tracy
生没年:1900-67

アメリカの映画俳優ハリウッドでもっとも芸域の広い名優として尊敬された。ウィスコンシン州ミルウォーキー生れ。初め聖職者を志したが,学生芝居で主役を演じてから俳優を志し,ハリウッドのトップスターの一人となった。1935年にMGMへ移ってから芸域の広さを示す作品に恵まれ,とくにビクター・フレミング監督の《我は海の子》(1937)とノーマン・タウログ監督の《少年の町》(1938)でアカデミー賞の歴史で最初にして唯一の2年連続アカデミー主演男優賞の受賞者となり,その後も《桑港》(1936),《花嫁の父》(1950),《日本人の勲章》(1955),《老人と海》(1958),《ニュールンベルグ裁判》(1961),《招かれざる客》(1967)でノミネートされた。

 第2次世界大戦前は,飲酒によるトラブルや女優ロレッタヤングとの関係をめぐって好ましからざる風評もあったが,42年のジョージ・スティーブンス監督《女性No.1》をはじめとする9本の作品で共演することになったキャサリンヘプバーンとの公私にわたる親交がハリウッドの〈伝説〉になると,トレーシーには別居中の妻がいたにもかかわらず,ゴシップ種にされることもなく,2人で共演した《アダム氏とマダム》(1949)の監督でもある劇作家ガースン・ケニンによる伝記《トレーシーとヘプバーン》(1970)は,良書としてベストセラーにもなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トレーシー」の意味・わかりやすい解説

トレーシー
Tracy, Spencer

[生]1900.4.5. ウィスコンシン,ミルウォーキー
[没]1967.6.10. カリフォルニア,ビバリーヒルズ
アメリカ合衆国の映画・舞台俳優。フルネーム Spencer Bonaventure Tracy。1922年にニューヨークへ行き,同年ブロードウェーの舞台でデビュー。1930年死刑囚を演じた"The Last Mile"で高い評価を受け,ジョン・フォード監督の映画『河上の別荘』Up the River(1930)に起用された。『我は海の子』Captains Courageous (1937) ,『少年の町』Boys Town (1938) で 2年連続してアカデミー賞主演男優賞受賞。ほかの出演作品に『激怒』Fury (1936) ,『花嫁の父』Father of the Bride (1950) ,『老人と海』THE OLD MAN AND THE SEA (1958) などがある。女優のキャサリン・ヘップバーンとは公私にわたるパートナーとして知られ,9作品で共演した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トレーシー」の意味・わかりやすい解説

トレーシー
とれーしー
Spencer Tracy
(1900―1967)

アメリカの映画俳優。4月5日、ウィスコンシン州ミルウォーキーに生まれる。アメリカ演劇アカデミーに学んでブロードウェーの舞台に立ち、1930年にハリウッドへ招かれ、性格的な映画演技に専念した。牧師や主人公の親友など男性的で強固な意志をもつ役を得意とし、中年以後はキャサリン・ヘップバーンと組んだ都会喜劇が評判をよんだ。『我は海の子』(1937)、『少年の町』(1938)と連続してアカデミー主演男優賞を獲得。ほかの代表作に『大草原』(1947)、『老人と海』(1958)、『招かれざる客』(1967)など。

[日野康一]

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世界大百科事典(旧版)内のトレーシーの言及

【ヘプバーン】より

… しかし,MGMに移って,ブロードウェーの舞台でも主役を演じた《フィラデルフィア物語》(1940)がヒットし,ニューヨーク映画批評家協会の女優賞を受賞。《女性No.1》(1942)でスペンサー・トレーシーと初めて共演,トレーシーとはその後9本の映画に共演して,ハリウッド屈指のコンビといわれた。ブロードウェーやロンドンで舞台に意欲を示しながら《アフリカの女王》(ジョン・ヒューストン監督,1951),《旅情》(デビット・リーン監督,1955),《去年の夏突然に》(ジョセフ・マンキーウィッツ監督,1959)などの優れた作品を選んで映画に出演し,《夜への長い旅路》(1962)ではカンヌ映画祭の女優賞を受賞した。…

※「トレーシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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