日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドミニクス」の意味・わかりやすい解説
ドミニクス
どみにくす
Dominicus ラテン語
Domingo de Guzman スペイン語
(1170―1221)
ドミニコ会の創立者。西欧中世の十字軍と都市の発展の時代にスペインに生まれる。当時の無知な人々、とくに南フランスで善悪二元論を教えるカタリ派の人々にキリストの福音(ふくいん)を説こうとした。そのため、剣(つるぎ)によらず村から村を巡って説教やロザリオの祈りをなし、「貧しいキリスト教徒」として托鉢(たくはつ)によって清貧の手本を人々に示した。1215年、説教によってヨーロッパ全土にキリスト教の真理を広めようと、説教者修道会を同志とともに設立した。翌1216年教皇ホノリウス3世Honorius Ⅲ(在位1216~1227)によって修道会として認可された。これがドミニコ会である。1221年、彼はイタリアのボローニャでその祈りと活動に満ちた生涯を閉じ、1234年に列聖された。青年時代に神学を愛したが、飢饉(ききん)のとき、「人々の飢えて死んでゆくのを、死んだ羊皮紙の上に座って見過ごすことはできない」と、貴重な羊皮紙写本を売って人々を助けたことは有名である。
[宮本久雄 2017年11月17日]
『マリ・ドミニック・ポアンスネ著、岳野慶作訳『聖ドミニコ』(中央出版社・グロリア文庫/のちサンパウロ・アルバ文庫)』