改訂新版 世界大百科事典 「ナエウィウス」の意味・わかりやすい解説
ナエウィウス
Gnaeus Naevius
前3世紀のローマの詩人。生没年不詳。カンパニア地方の出身。第1次ポエニ戦争に従軍したのち,劇作家として文壇に登場,ギリシアのアッティカ新喜劇の諸作品を混合し,それにローマ的装いを与えて後輩のプラウトゥスに大きな影響を与えた。だが,プラウトゥスの全作品が現存するのに対して彼の30余りの喜劇はわずかの断片を除いてすべて散逸した。悲劇も6編の表題が伝わるだけで作品自体は現存しない。みずから兵士として参加したポエニ戦争を晩年に作品化した歴史的叙事詩《ポエニ戦争》もわずかの断片を数えるのみである。だが,その断片および古注によるとローマの起源を神話時代にさかのぼって述べた個所で,ウェルギリウスに先んじてアエネアスとカルタゴの女王ディドの出会いを設定していたことがうかがえる。劇作家としても叙事詩人としても後続の詩人に凌駕(りようが)されたが,先駆者として両ジャンルの発展に貢献があった。
執筆者:三浦 尤三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報