ナエウィウス(英語表記)Gnaeus Naevius

改訂新版 世界大百科事典 「ナエウィウス」の意味・わかりやすい解説

ナエウィウス
Gnaeus Naevius

前3世紀のローマ詩人。生没年不詳。カンパニア地方の出身。第1次ポエニ戦争に従軍したのち,劇作家として文壇に登場,ギリシアアッティカ新喜劇の諸作品を混合し,それにローマ的装いを与えて後輩のプラウトゥスに大きな影響を与えた。だが,プラウトゥスの全作品が現存するのに対して彼の30余りの喜劇はわずかの断片を除いてすべて散逸した。悲劇も6編の表題が伝わるだけで作品自体は現存しない。みずから兵士として参加したポエニ戦争を晩年に作品化した歴史的叙事詩《ポエニ戦争》もわずかの断片を数えるのみである。だが,その断片および古注によるとローマの起源を神話時代にさかのぼって述べた個所で,ウェルギリウスに先んじてアエネアスカルタゴの女王ディドの出会いを設定していたことがうかがえる。劇作家としても叙事詩人としても後続の詩人に凌駕(りようが)されたが,先駆者として両ジャンルの発展に貢献があった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナエウィウス」の意味・わかりやすい解説

ナエウィウス
Naevius, Gnaeus

[生]前270頃.ローマ?
[没]前201頃.ウティカ
ローマの詩人,劇作家。高官たちを作品中で攻撃したために投獄され,護民官の力で釈放されたが国外に追放され,北アフリカで客死。トロイ伝説に取材した悲劇,ギリシア式の喜劇 (パリアタ劇 ) ,ローマの生活に取材した喜劇 (トガタ劇 ) を書いたほか,ローマ歴史劇 (プラエテクスタ劇 ) を創始した。サトゥルヌス詩体の国民的叙事詩『ポエニ戦役』 Bellum Punicumはエンニウスやウェルギリウスに多大の影響を与えた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナエウィウス」の意味・わかりやすい解説

ナエウィウス
なえうぃうす
Gnaeus Naevius
(前270ころ―前201ころ)

古代ローマの詩人。第一次ポエニ戦争に従軍後、劇作を始める。ギリシア悲・喜劇の翻案を発展させ、真にローマ的な史劇を創造したが、政治家を批判したため投獄、追放された。劇作家としてはプラウトゥスの基礎を築き、叙事詩『ポエニ戦役』はエンニウス、ウェルギリウスに影響を与えた。今日、43の作品の題名と断片200余行が残る。

[土岐正策]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のナエウィウスの言及

【ラテン文学】より


[初期(前3~前2世紀)]
 ラテン文学は口承文学を別にすれば,前3世紀,ローマがイタリア半島を征服したときに,南イタリアのギリシア都市出身のリウィウス・アンドロニクスLivius Andronicusが,ホメロスの《オデュッセイア》に基づく叙事詩《オデュッシア》を発表したときに始まる。これに,ナエウィウスの《ポエニ戦争》とエンニウスの《年代記》の叙事詩2編が続く。エンニウスはこの詩によってのちに〈ラテン文学の父〉と呼ばれた。…

※「ナエウィウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android