改訂新版 世界大百科事典 「ナブコ」の意味・わかりやすい解説
ナブコ
Joaquim Nabuco
生没年:1849-1910
ブラジルの外交官,奴隷解放運動の指導者。父も祖父も上院議員という北東部地方の名門の出。1865年から70年までサン・パウロと故郷レシフェで法学を修めた。76年大使館員としてワシントンに駐在し,78年ロンドンへ移ったが,同年帰国してペルナンブコ州代表の下院議員に選出された。議会において即時かつ無補償の奴隷解放を求めて活発な運動を展開したが,任期満了後に再選を果たせずロンドンへ出発した。同地の〈奴隷制反対協会〉の支持を得て,国際的な場でブラジルの奴隷制を告発した。ロンドン滞在中に出版した《奴隷廃止論》(1883)はブラジルでも多大の反響を呼び,85年の部分的奴隷解放法,次いで88年の〈黄金法〉と称される奴隷解放法の公布に寄与した。奴隷制に反対であったが,君主制には賛成であったため,89年の帝政崩壊後は政界を退いて著述活動に専念し,晩年の10年間は外交官生活を送った。
執筆者:住田 育法
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報