改訂新版 世界大百科事典 「にかほ」の意味・わかりやすい解説
にかほ[市]
秋田県南西端の市。2005年10月象潟(きさかた),金浦(このうら),仁賀保(にかほ)の3町が合体して成立した。人口2万7544(2010)。
象潟
にかほ市南西部の旧町。旧由利郡所属。人口1万3288(2000)。鳥海山の西麓を占め,噴火による泥流が小丘群をつくっている。象潟はかつては東の松島と対比される景勝地であったが,1804年(文化1)の象潟地震による地盤隆起で干上がり,のち水田化された。中心地象潟は,砂州状の微高地に位置し,町の南には1967年完成の掘込み式の新漁港がある。電気機器,農機具などの工場があり,近年出荷額の伸びが著しい。72年には鳥海山の五合目鉾立を通り山形県吹浦と結ぶ鳥海ブルーラインが開通し(97年無料開放),鳥海国定公園観光の拠点となった。海岸沿いに国道7号線,JR羽越本線が通る。
金浦
にかほ市北西部の旧町。旧由利郡所属。人口5108(2000)。鳥海山の北西麓にあたり,火山泥流丘が多くみられ,丘陵間の低地に水田が開ける。中心地の金浦は1232年(貞永1)開港と伝えられる港町で,近世は佐渡小木,津軽深浦と並ぶ日本海航路の三大避難港として知られた。1804年(文化1)の象潟地震による隆起で港内の2/3が陸地化し,規模は小さくなったが,県南の中核漁港として,ハタハタ,タラなどの沿岸漁業の拠点となっている。農業は米作のほか,ミョウガやイチジクの栽培が盛ん。県内では最も温暖な地で,勢至公園の桜並木は早咲きで知られ,タブの群生林は日本海岸では北限といわれる。毎年2月4日に行われる金浦神社の掛魚(かけよ)祭は,寒ダラを奉納し海上安全と豊漁を祈願するもので,タラ祭とも呼ばれる。JR羽越本線,国道7号線が通じる。
仁賀保
にかほ市北東部の旧町。旧由利郡所属。人口1万1951(2000)。北西は日本海に面し,県内では最も温暖な地である。鳥海山の北西麓にあたり,火山泥流による多くの小丘が水田の中に島状に分布し,鳥海山に源を発する白雪川下流域に平地が広がる。中世以来,由利十二頭の仁賀保氏が領し,江戸時代は旗本の知行所であった。かつては湿田地帯であったが,明治後期に仁賀保氏の用人出身の斎藤宇一郎が乾田馬耕の米作をとり入れ,米作の先進地域としたことで知られる。中心地平沢には昭和初期に改修された平沢漁港があり,特産のハタハタなどを水揚げする。大正期に院内油田が掘削されてから石油の町として発展し,1931年には製油所も設立されたが,のち衰退した。第2次大戦中に疎開してきた東京電気化学工業(現,TDK)を中心に電気機械工業が主要産業で,県内の町村で有数の出荷額をあげている。JR羽越本線,国道7号線が通じる。
執筆者:佐藤 裕治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報