象潟(読み)キサカタ

デジタル大辞泉 「象潟」の意味・読み・例文・類語

きさかた【象潟】

秋田県にかほ市の地名。旧町名。日本海に面する。もとは入り江で、八十八九十九島と形容される景勝地であったが、文化元年(1804)の地震で陸地化し、現在は水田。→にかほ[歌枕]
「さすらふる我が身にしあれば―や海人あま苫屋とまやにあまたたびぬ」〈新古今・羇旅〉

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精選版 日本国語大辞典 「象潟」の意味・読み・例文・類語

きさかた【象潟】

  1. 秋田県南西端の地名。日本海に面し、かつては八十八潟、九十九(つくも)島の景観で知られたが、文化元年(一八〇四)の地震で陸地化した。鳥海山の登山口。

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日本歴史地名大系 「象潟」の解説

象潟
きさかた

日本海に臨み、現在は鳥海山北西麓の砂丘上にあたる。かつて東西一・五キロ、南北約五キロの潟があり、その中に多くの島が点在し、九十九つくも島や八十八はちじゆうはち潟の勝景があった。蚶方(延喜式)、蚶潟(出羽国風土略記)、象滷(出羽国風土記)とも記す。

「蚶潟は上古よりの名所にて、其創始を知らす。一説に嘉祥年間の地変に出来と云も未た確ならす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「象潟」の意味・わかりやすい解説

象潟
きさかた

秋田県南西端、由利郡(ゆりぐん)にあった旧町名(象潟町(まち))。現在は、にかほ市象潟町で、市の南部を占める。1896年(明治29)塩越(しおこし)村が町制施行して象潟町成立。1955年(昭和30)上浜(かみはま)、上郷(かみごう)の2村と合併。2005年(平成17)仁賀保(にかほ)、金浦(このうら)の2町と合併して市制施行、にかほ市となった。象潟という地名は、かつてこの地で蚶貝(きさがい)が多くとれたことに由来し、蚶方(きさかた)から象潟に変わったといわれる。JR羽越本線と国道7号(酒田国道)が日本海沿いをほぼ並行して走る。一帯は鳥海火山(ちょうかいかざん)による泥流地形で、海食作用で泥層が削られて岩島となり、八十八潟九十九島の景観をみせていた。そのころの自然美は松尾芭蕉(ばしょう)の『おくのほそ道』にも記されている。1804年(文化1)6月4日の直下型地震で土地が2.5メートル隆起し、潟は平地となった。現在も水田の中にマツの生えた小島が散在する。このあたりは鳥海国定公園の一部であり、また国の天然記念物に指定されている。蚶満寺(かんまんじ)には芭蕉の句碑があり、奈曽の白瀑谷(なそのしらたきだに)は国の名勝。米作主体の農業ほか沿岸漁業栽培漁業も行われている。

[宮崎禮次郎]

『『象潟町史』(1973・象潟町)』『『象潟町史 資料編・通史編』全4巻(1996~2002・象潟町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「象潟」の意味・わかりやすい解説

象潟 (きさかた)

秋田県南西部,にかほ市の旧象潟町から北隣の同市の旧金浦(このうら)町南部に及んだ入江で,俗に八十八潟九十九(つくも)島といわれた。きさかた(蚶方)の地名は,古く《延喜式》にみえるが,象潟は北条時頼の寄進状に初出という。ここは鳥海山西麓の泥流末端であるが,長年の海食は泥土を削り去って,松林をのせた岩塊群を,入江に島状に浮上させた。鳥海山を背景にしたこの景観は,歌枕として広く知られ,能因法師は〈世の中はかくても経けり象潟や海人(あま)の苫屋をわが宿にして〉(《後拾遺集》)の歌を残している。芭蕉は《おくのほそ道》で〈松島は笑ふがごとく象潟はうらむがごとし〉と述べ,〈象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花〉の句を詠んだ。県指定文化財の《象潟図屛風》は当時を克明に描写する。1804年(文化1)の象潟地震により,付近一帯は約2.4m隆起したため,この入江は一夜にして無残な沼沢地と化した。本荘藩はこの3年後から干拓に乗り出し,のち民営に代わったが,水田化に成功,旧象潟町の主要米作地帯となった。たんぼの中に小丘群の散在する風景は独特のもので,往時をしのぶことも不可能ではない。地変に基づくこの景観は天然記念物に指定され,鳥海国定公園の一部である。たんぼを掘れば,当時,入江に生息した貝類の殻が数多く出土する。象潟の南寄りに位する蚶満(かんまん)寺は神功皇后の伝説を伝え,史跡や文化財に富む。
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象潟(旧町) (きさかた)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「象潟」の意味・わかりやすい解説

象潟
きさかた

秋田県南西端,にかほ市中・南部を占める旧町域。日本海に臨み,南は山形県に接する。 1896年町制。 1955年上浜村,上郷村の2村と合体。 2005年仁賀保町,金浦町と合体してにかほ市となった。中心集落は鳥海山北西麓の砂丘上にある。その背後は,かつては鳥海火山の泥流が海食を受けて形成された八十八潟,九十九島で有名な景勝地であった。文化1 (1804) 年の地震で 2.4m隆起し,潟も陸地と化し,その後水田が開かれた。県内では最も温暖で,米,野菜などを産する。漁業も行なわれ,特に夏にとれる天然岩ガキが有名。温泉,海水浴場があり,観光地,保養地として開発されている。蚶満寺 (かんまんじ) や国指定名勝の奈曽の白滝などがあり,水田にかつての岩島が散在する象潟は国指定天然記念物。鳥海国定公園に属する。

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百科事典マイペディア 「象潟」の意味・わかりやすい解説

象潟[町]【きさかた】

秋田県南西部,由利郡の旧町。羽越本線が通じる。かつては松島と並ぶ名勝であったが,1804年の地震により隆起,現在は水田の中に小丘が残る(天然記念物)。蚶満(かんまん)寺,奈曾ノ白滝などの名所,象潟温泉,海水浴場があり,一部は鳥海国定公園に属する。温暖の地で米を多産,水産業も行われる。2005年10月,由利郡仁賀保町,金浦町と合併し市制,にかほ市となる。124.02km2。1万3111人(2003)。

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デジタル大辞泉プラス 「象潟」の解説

象潟(きさかた)

秋田県にかほ市にある道の駅。国道7号に沿う。

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