日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニザン」の意味・わかりやすい解説
ニザン
にざん
Paul Nizan
(1905―1940)
フランスの小説家、哲学者。両大戦間の代表的知識人の一人。高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)在学中にサルトルと親交を結ぶ。フランス共産党に入党し(1927)、アラゴンとともに党員文学者として、1930年代の反ファシズム文化運動の中心的存在となった。しかし、独ソ不可侵条約(1939)に対するフランス共産党の態度を非として脱党。その直後にイギリス・フランス両国はドイツに宣戦を布告し、ニザンは動員されて翌1940年に戦死した。第二次世界大戦後、共産党から裏切り者としていわれのない非難中傷を浴びせられたが、名誉回復に努めたサルトルらの努力が実って、1950年代末から1960年代にかけ、彼の著書は若い世代に争って読まれ、大きな影響を与えた。とくに、美しい決意の書である『アデン・アラビア』(1931)や、御用哲学者たちを痛烈に罵倒(ばとう)した『番犬たち』(1932)のほか、小説では『陰謀』(1938)、自分の父親をモデルにした『アントアーヌ・ブロワイエ』(1933)などが重要である。
『海老坂武他訳『ポール・ニザン著作集』9巻別巻2(1966〜1975・晶文社)』