フェノール系の殺菌剤で除草剤としても広く用いられた。pentachlorophenolの略で,融点191℃の無色の結晶である。ナシの黒斑病,黒星病,赤星病,ブドウの黒痘病,ミカンのそうか(瘡痂)病,かいよう(潰瘍)病,カキの黒星病,炭疽(たんそ)病,モモの縮葉病,黒星病などの果樹の病害の防除に使用された。また,植物に対しては非選択的に殺草性を示す。PCPを田植直後の水田に散布すると,水田の土壌表面に吸着され,そこで生育を始めたメビエなどイネ科雑草を非選択的に除草するが,田植によって土壌の中に深く植えこまれたイネの生長点には影響を与えない。このような施用法で選択的な除草を行うことができる。しかし,魚毒性が高いこと,また,より有効な選択的除草剤が開発されたため,現在では水田除草剤としては使用されない。PCPは細胞のエネルギー代謝における電子伝達系に対する脱共役剤として作用する。PCPの哺乳類に対する急性毒性は,50%致死量LD50=100mg/kg(ラット,経口),魚毒は50%致死濃度LC50=0.2~0.6ppmと強く,水質汚濁性農薬に指定されたが,現在では農薬登録からはずされている。
執筆者:高橋 信孝
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…アメリカでは精神科を訪れる緊急患者の最多数がアルコール依存症,第2位がフェンサイクリジン急性中毒である。これは〈天使の粉(エンゼル・ダストangel dust)〉とかPCPと呼ばれてアメリカで大流行している薬であり,その使用経験者はアメリカだけで700万人,薬物乱用者の65%を占め,1977年には,これが原因で死亡した者100人,救急入院者4000人に達した。この急性中毒では説得も無効だし抗精神病薬も与えてはならない。…
… ピペロホス,ブタミホスなどの有機リン酸エステル系除草剤は,植物の生長点の細胞分裂や,伸長阻害によって幼植物に対して選択的殺草効果を示す。 フェノール系除草剤であるPCPは殺菌力を有する。水田のノビエの防除によく用いられていたが,魚毒性が大きい欠点を有し,現在では使用されない。…
※「PCP」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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