日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌルクセ」の意味・わかりやすい解説
ヌルクセ
ぬるくせ
Ragnar Nurkse
(1907―1959)
国際経済学者。エストニア生まれ。エジンバラ大学、ウィーン大学に学んだ。第二次世界大戦前は国際連盟に勤務し、戦後はアメリカに移ってコロンビア大学教授となり、ジュネーブ郊外で急死するまでその職にあった。彼は最初は主として国際資本移動や国際通貨の問題を研究し、その一つの成果が、国際資本移動の理論を簡潔にまとめた代表的著書として名高い第一の主著『国際資本移動論』Internationale Kapitalbewegungen(1935)として結実している。また第二の主著『国際通貨』International Currency Experience : Lessons of the Interwar Period(1944)は、両大戦間期の外国為替(かわせ)や国際金融の問題を、理論的、実証的に分析した優れた著作として高い評価を受けている。
第二次世界大戦後は発展途上国の経済開発の問題にも関心を広げ、『低開発諸国の資本形成』Problems of Capital Formation in Underdeveloped Countries(1953)では、発展途上国の経済発展が困難な原因を、一次産品の輸出の伸びが低いことや貧困の悪循環に求め、それを克服して経済発展を推進するためには、各産業が需要に見合った均斉のとれた成長をすべきことを提唱した。
[志田 明]
『増井光蔵・傍島省三訳『国際資本移動論』(1938・日本評論社)』▽『村野孝・小島清訳『ヌルクセ国際通貨』(1953・東洋経済新報社)』▽『土屋六郎訳『後進諸国の資本形成』(1955・巌松堂)』