日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネウマ」の意味・わかりやすい解説
ネウマ
ねうま
neuma ギリシア語
neuma ラテン語
neuma イタリア語
neume 英語
neume フランス語
Neume ドイツ語
記譜法の一種。本来はグレゴリオ聖歌の表示のためだけに用いられた記号をさすが、現在ではビザンティン聖歌や西欧中世の世俗曲などにみられる類似の音符をもネウマとよぶことがある。ネウマは歌詞の上に書かれ、旋律の進む方向や演奏の方法などを指示する。
9~10世紀ごろの写本におけるネウマは、曲線やかぎ、ダッシュ、点などで記され、譜線がないために正確な音高を表さず、単に旋律の上がり下がりだけを示すものであった。この種のネウマには、古代ギリシアの詩におけるアクセント記号からの多大な影響がうかがえる。その後ネウマの形は時代とともに変化し、13世紀までには四角い音符となり、譜線も添えられ(原則として4本)、正確な音高をも示すようになった。しかし音の長短は不明瞭(めいりょう)で、19世紀以来、そのリズム解釈をめぐって大きな論争がおきている。現在でも、ローマ・カトリック教会の聖歌本のなかで、この四角いネウマをみることができる。
[黒坂俊昭]