日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノバラ」の意味・わかりやすい解説
ノバラ
のばら / 野薔薇
バラ科(APG分類:バラ科)バラ属Rosaのノイバラと同意義に用いられるが、一般には野生のバラ属植物の総称名として用いられる。主として北半球に約200種あり、日本には13種分布する。落葉性で、直立または半直立のほか、ややよじ登るもの、地をはうものもある。普通は刺(とげ)があるが、まれにないものもある。葉は互生で奇数羽状葉。花は単一から房状にあるものまであり、花弁は4枚以上、雄しべは多数。萼(がく)は普通は5枚。花色は白、紅、黄色の濃淡およびその組合せがあり、色素はアントシアン系、フラボン系、カロチノイド系の3系がある。
観賞用の栽培バラはノバラの人工雑種を主としたものであるが、日本の自生種間においては自然雑種を生じ、分類困難なものもある。
[鈴木省三 2020年1月21日]
文化史
古くはウマラとよばれ、『万葉集』に「道のへの茨(うまら)の末(うれ)に延(は)ほ豆(まめ)のからまる君をはかれか行かむ」(巻20.4352)と歌われる。ノバラの一種でヨーロッパ産のR. villosa L.(R. pomifera Herrm.)は、ローマ時代から、その果実でワインがつくられた。第二次世界大戦中イギリスはオレンジやレモンの輸入が困難になり、野生のドッグローズR. canina L.でシロップをつくり、ビタミンCの補給を図った。1943年には500トンを集め、250万本の瓶詰シロップが生産された。
[湯浅浩史 2020年1月21日]