日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハギンズ」の意味・わかりやすい解説
ハギンズ(Sir William Huggins)
はぎんず
Sir William Huggins
(1824―1910)
イギリスの天文学者。恒星分光写真術の開拓者。ロンドンに生まれ、病弱のため大学進学をあきらめ、家業を継いだ。1856年、私設天文台を建て、天体観測に没頭した。1859年ごろまでは主として惑星を観測したが、キルヒホッフとブンゼンのスペクトル線の解釈を知り、分光器と写真機との組合せを考え、恒星のスペクトル写真観測を始めた。1864年、その観測資料を王立天文協会に提出し、認められて翌年、会員に選ばれた。とくに輝星の大気の元素組成を検出し、散光星雲は水素輝線を呈する高温ガス体であること、アンドロメダ星雲(銀河)は吸収線を伴う恒星の集団であることを確認し、1868年以来、ドップラーの原理を用いて約30個の恒星の視線速度を測定、また彗星(すいせい)の炭素や太陽紅炎(こうえん)中のカルシウムを分光観測で発見した。多彩な業績により王立協会、王立天文協会より表彰され、両協会会長を歴任、1897年ナイトに叙せられた。
[島村福太郎]
ハギンズ(Charles Brenton Huggins)
はぎんず
Charles Brenton Huggins
(1901―1997)
アメリカの外科医、がん学者。1966年、がんの成因と治療に関してノーベル医学生理学賞を受けた。カナダのハリファックスに生まれる。ハーバード大学医学部を卒業。ミシガン大学外科を経て、シカゴ大学で助教授から教授まで昇進、1951年からベン・メイがん研究所長。1941年に前立腺(ぜんりつせん)がんの患者に、去勢あるいは女性ホルモンであるエストロジェンを与えて良好な成績を得たことを報告し、がんのホルモン療法の端緒を開いた。
[中川米造 2018年9月19日]
ハギンズ(Maurice Loyal Huggins)
はぎんず
Maurice Loyal Huggins
(1897―1981)
アメリカの化学者。9月19日カリフォルニア州バークリーに生まれる。カリフォルニア大学卒業後、ハーバード、スタンフォード大学で研究、スタンフォード研究所物理化学部門部長(1959)。原子間距離と結合エネルギー、それらと分子構造・結晶構造との関係を研究。水素結合概念を提唱(1921)。ガラスや高分子の物質構造の研究も行う。1942年、今日フローリー‐ハギンズの理論として知られる高分子溶液理論をフローリーと独立に発表。1955~1956年(昭和30~31)大阪大学、京都大学に招聘(しょうへい)教授として来日した。
[大友詔雄]
『藤代亮一・田所宏行訳『高分子物理化学』(1959・丸善)』