日本大百科全書(ニッポニカ) 「バッラ」の意味・わかりやすい解説
バッラ(Giacomo Balla)
ばっら
Giacomo Balla
(1871―1958)
イタリアの画家。トリノで生まれ、1895年ローマに移住して生涯を送る。初め分割主義的な技法を用いて労働者や疎外者などの世界を主題にした『狂女』(1905)を描く。1900年パリに旅行。10年「未来主義画家宣言」に署名し、光や形象の運動を解体してリズムや速度を表現する特異な作品(1912年の『バルコニーを走る少女』『鎖につながれた犬のダイナミズム』など)を相次いで発表する。それはイタリア近代絵画における最初の抽象的傾向を示すものであり、他のヨーロッパ諸国の前衛美術にも大きな影響を与えた。15年デペロとともに「宇宙の未来主義的再構成」に署名し、立体的造形や装飾美術の分野で活躍する。20年代には政治活動にもかかわり、映画に関心をもつが、それはバッラの光と運動の探求の必然的帰結である。30年以降はふたたび初期の具象的な絵画に戻って影響力を失った。
[小川 煕]
バッラ(Lorenzo Valla)
ばっら
Lorenzo Valla
(1407ころ―1457)
ルネサンス期イタリアの哲学者、文献学者。歯に衣(きぬ)を着せぬ批判で多くの敵をつくり、波乱の生涯を送った。地上の快楽は究極的なそれ、つまりキリスト教徒としての天上の至福に従属させるべきとしながらも、自然は神の御業(みわざ)であり、自然な生き方つまり地上で肉体の快楽を享受するのも人間の務めだと快楽主義を肯定した(『快楽論』1431年刊)。また、ラテン語、ギリシア語を歴史的、批判的に追究し、ことばの真の意味を把握すべきであり、それにより、ことばが伝える歴史の真の姿に迫ることが可能だとした。この理論を応用し、教会の世俗所有権の根拠となっていた「コンスタンティヌス帝の寄進状」(コンスタンティヌスの定め)が偽書であることを証明した。
[在里寛司 2015年10月20日]