日本大百科全書(ニッポニカ) 「ばね鋼」の意味・わかりやすい解説
ばね鋼
ばねこう
spring steels
ばねの材料となる鋼。ばねの特性は、まず弾性限(除荷後に負荷前の形に戻る最大応力)で評価される。その素材のばね鋼は、形状から板(帯)と棒(線)に分類され、多種の規格があるが、ここでは加工法と熱処理の観点から述べる。
(1)熱間成形用ばね鋼 板ばねやトーションバー等の大型ばねに多く使用され、あらかじめ所定の形状に熱間成形したあと、約850℃から焼入れ、約500℃で焼戻しをする。弾性限を高めるために一般の鋼よりシリコン含有を高くし、大型品用には焼入れ性のよい合金鋼が用いられる。熱処理の際に表面が脱炭すると疲労強度が低下するので、硬質粒子を吹きつけて(shot peeing)強化する。
(2)冷間成形用ばね鋼 あらかじめ熱処理を施して組織を整えたあとに、室温で伸線加工して強度を向上させたものをコイルなどのばねに加工して使用する鋼である。熱処理の方法には次の2種類がある。(a)オイルテンパー(oil-quenching and temperingの略)といって、約900℃に加熱後に油焼入れし、これを400~500℃に焼戻しをする方法。この鋼は粒状炭化物が分散している。(b)赤熱した鋼を徐冷して炭化物が層状微細に配列したパーライト(pearlite)組織とする方法。
前者の鋼線をオイルテンパー線、後者は一般に硬鋼線といわれている。後者の代表的なものがピアノ線であり、加熱線を溶融鉛浴に漬浸する。この熱処理をパテンティングpatentingという。
[須藤 一]