降伏点(読み)コウフクテン(その他表記)yield point

翻訳|yield point

デジタル大辞泉 「降伏点」の意味・読み・例文・類語

こうふく‐てん〔カウフク‐〕【降伏点】

物体に力を加えていったとき、弾性限界を超えて物体の変形が急激に増加し、もとに戻らなくなるときの力の大きさ。降伏応力

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精選版 日本国語大辞典 「降伏点」の意味・読み・例文・類語

こうふく‐てんカウフク‥【降伏点】

  1. 〘 名詞 〙 物体に働く外力を増加させた場合、応力ひずみとの比例関係がやぶれてひずみだけが増加するときの応力。これをこえると、物体は永久変形を生ずる。材料の機械的強度のめやす。

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改訂新版 世界大百科事典 「降伏点」の意味・わかりやすい解説

降伏点 (こうふくてん)
yield point

固体荷重を加えていくとある値で塑性変形が発生する。この現象降伏yieldingといい,そのときの応力を降伏点と呼ぶ。低中炭素鋼では明りょうな降伏が認められ,塑性変形の開始と同時にいったん応力は多少低下し,その応力で塑性変形が進展する。塑性変形の開始応力を上降伏点,進展する応力を下降伏点という。材料に塑性変形が生ずれば変形が過大になったり,荷重を取り除いても形が元に復元しなくなるなどの不つごうが構造に生ずる。降伏点は構造の強さを知る一つの目安となり,通常,応力が降伏点を越えることのないよう設計される。炭素鋼以外の鉄鋼材料など大部分金属材料プラスチックは明りょうな降伏点を示さないので,ある大きさの永久ひずみを生ずるときの応力を耐力と呼んで,これを降伏点と同等に取り扱う。
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百科事典マイペディア 「降伏点」の意味・わかりやすい解説

降伏点【こうふくてん】

物体に加える外力を次第に増したとき,応力弾性限度を越えるある値に達すると,応力がほとんど増加することなくひずみだけが急激に増加する。この限界の応力を降伏点という。金属材料の引張試験における重要な量で,軟鋼では明確に出現硬鋼鋳鉄では不明確なので,普通0.2%の永久変形を生じるときの応力を降伏点とする。

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化学辞典 第2版 「降伏点」の解説

降伏点
コウフクテン
yield point

応力が材料の弾性限界を超えて変形がはじまる点.このときの応力を降伏応力という.金属材料に外力が加えられると,まず結晶原子間の距離に変化が生じ,弾性的に変形する.外力がその材料の固有の値を超えると,特定結晶面(すべり面)の上下のブロックの間に相対的な移動が起こる.この変形は,弾性変形に比較して大きく,荷重変形曲線上で荷重の上昇がなく,急激に変形の進む点として認められる.鋼における降伏点はとくに顕著で,降伏点において荷重の低下が認められる.これは固溶炭素などによる転位の固着と解放の結果と考えられている.炭素鋼の場合,降伏を開始した応力を上部降伏点という.さらに変形を続けると応力は低下し,安定した値を示す.これを下部降伏点という.工業的にとくに指定のない場合,上部降伏点を降伏点という.炭素鋼以外の材料には降伏点における荷重低下がないため,通常,0.2% の永久変形をする値を降伏点として用いる.これは耐力(0.2% 耐力)ともよばれる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「降伏点」の意味・わかりやすい解説

降伏点
こうふくてん
yield point

材料を常温で引張る場合,応力が比例限度をこえてある一点に達すると,急に応力がそれより少し低下して,応力はほぼ一定のまま,しばらくの間ひずみだけが増加する場合がある。焼鈍した軟鋼試験片はその代表的な例である。この現象を降伏といい,降伏の始る点の応力 (上降伏点) と降伏が進行し続ける一定応力 (下降伏点) を合せて降伏点という (JISでは上降伏点を降伏点と規定している) 。上降伏点は試験片の形状,引張り速度,試験機の剛性などによって変る。降伏現象は鉄そのものの特性ではなく,固溶されている炭素その他の状態によるとする説が有力である。 (→耐力 )  

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世界大百科事典(旧版)内の降伏点の言及

【加工硬化】より

…すなわち,塑性変形に伴い転位が増殖され,それが不均一な分布となり,互いにもつれ合うことで運動する転位に対する障害となり,それ以上の転位の運動が抑制されるために変形抵抗が増す。したがって,一度,塑性変形を受けてきた材料はその応力範囲で弾性挙動を示し,もとの材料より降伏点(塑性変形開始点)は高まって,塑性変形を起こしにくくなるとともに破断伸びが小さくなって,いわゆるかたい性質を呈する。加工硬化を生じた金属はかたく強くなるが,もろくなる。…

【塑性】より

…体心立方金属のような硬い金属や半導体結晶は,顕著な降伏を示す。降伏を起こすときの応力を降伏応力,あるいは降伏点というが,これは物質固有の量ではなく,熱処理の条件など履歴に依存し,また試料の含む不純物にも関係する。不純物を含むとふつうは硬くなるので,これによる硬化は固溶体硬化と呼ばれている。…

【弾性】より

…また金属などでは弾性限度をこえて応力を加えた場合,応力が一定に保たれていても変形が連続的に進むようになる。このときの応力を降伏点という。 外力を加えて生じた応力が弾性限度内であっても,力を取り除いて元の平衡状態に戻るまでには有限の時間を要する。…

※「降伏点」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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