世界銀行(国際復興開発銀行)融資により、第二次世界大戦後の開拓としては画期的な規模と速度で機械開墾を実施し、短期間で酪農経営を確立するために建設された実験農場をいう。北海道別海(べつかい)村(現、別海町)床丹(とこたん)や青森県上北(かみきた)郡などで実施されたが、一般的には前者「根釧(こんせん)パイロットファーム」をさす。1956年(昭和31)に発足した床丹地区の場合は、北海道、北海道開発局、農地開発機械公団(現、森林研究・整備機構森林整備センター)が一体となり、あらかじめ6390ヘクタールの農地、道路、排水路、住宅、畜舎、学校等を整備し、そこに459戸を入植させ、1戸平均18.8ヘクタールの経営農地と12頭の乳牛を飼育する酪農村の建設が進められた。しかし、入植時の多額の借入金や乳牛(ジャージー種)のブルセラ症蔓延(まんえん)などが経営を圧迫して離農者が相次いだため、1964年までの入植者は361戸にとどまり、未入植地・離農地の再配分・交換分合などが実施された。その後床丹地区は、1971年の別海村の町制施行に伴い、地名が美原地区(床丹第一)と豊原地区(床丹第二)とに変更されている。旧床丹地区の農家は、オイル・ショック、乳価の低迷と生産調整、乳製品の輸入自由化や多額の債務など厳しい経営環境のなか、機械化・生産規模拡大を進めて経営の安定化を図ってきた。その結果、途中、離農者や新酪農村(1973年から国が根室(ねむろ)市、別海町、中標津(なかしべつ)町に建設した大規模な酪農村)への転出者などを出したが、2013年(平成25)3月末時点では110戸の農家が1戸平均86.4ヘクタール、乳牛132頭を飼育する大型酪農地域へと発展している。
[井村博宣]
北海道東部の根釧(こんせん)台地,根室支庁別海(べつかい)町床丹(とこたん)で1955年以降実施された根釧機械開墾事業による集約的酪農実験農場の呼称。第2次大戦後,食糧増産と引揚者,戦災者の失業救済のため,第1期北海道総合開発計画の第1次五ヵ年計画(1952-56)の一部として,国際復興開発銀行(世界銀行)の融資を受けて建設がすすめられた。このため大型土木機械の導入などにより開墾と土壌改良に必要な工期が大幅に短縮されたほか,あらかじめ道路,排水路,散居形態の住宅,畜舎,学校など生産,生活の共同施設が建設され,営農の早期安定を目ざした点に特色がみられる。1戸当りに配分された土地も18.6haで,この時期としてはかなり大規模なものであった。工事は床丹第2地区,同第1地区の順に行われ,その後それぞれ187戸,174戸が入植して草地酪農経営が行われた。65年には社会情勢の変化から経営規模拡大をめざし営農計画が変更され,1戸当りの配分面積も30.3haに引き上げられた。しかし,このような保護をうけた入植者も,厳しい自然環境と経済環境の変化に抗しきれずに離農する者も多く,定着率は約50%にすぎなかった。
1973年からは隣接した根室市,中標津(なかしべつ)町,標津町,浜中町を含む地域で,未利用地の開発と過密地域からの分散などにより,残存農家の経営規模拡大と土地の有機的・総合的利用をはかる新酪農村建設事業も進んでいる。
執筆者:奥平 忠志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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