改訂新版 世界大百科事典 「モスカ」の意味・わかりやすい解説
モスカ
Gaetano Mosca
生没年:1858-1941
イタリアの政治学者。シチリアに生まれる。トリノ大学(1895-1923)とローマ大学(1923-31)で憲法学と政治学を講じた。1908年から10年間,下院議員として現実政治にもたずさわり,19年には終身上院議員となった。V.パレート,R.ミヘルスとともにエリート理論を展開したことで知られる。パレートのエリート論が心理的要素を重視したのに対して,モスカの理論は組織的要素を重視するものであった。モスカの主著《支配する階級》(1936。原著のイタリア語版《政治学要綱Elementi di scienza politica》は1896年刊)によれば,あらゆる社会には,支配する階級と支配される階級が現れ,しかも支配する階級は少数である。その理由は,少数者は少数者であるがゆえに有効に組織されうるが,逆に多数者は多数者であるがゆえに組織されることが困難であり,その結果少数派の支配を受けざるをえないという事実に求められるとした。彼の理論はミヘルスが寡頭制の鉄則を定式化するのに強い影響を与えた。
執筆者:阿部 斉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報