リン酸塩処理phosphatingの俗称。リン酸および可溶性リン酸塩を主体とする水溶液で金属を処理し,その表面に不溶性リン酸塩皮膜をつくる化成処理法をいう。おもに鋼板の表面に亜鉛と鉄の複合リン酸塩を主体とする皮膜を形成させるもので,平均の厚みは0.1~3μm程度である。鋼のパーカライジングの目的は耐食性の向上と加工時の潤滑性の付与にある。防食目的のためには塗装の下地処理として薄い皮膜をつける場合と,厚い皮膜をつけたうえで防錆油(ぼうせいゆ)を含浸させて使用する場合とがある。潤滑目的のためには1μm程度の皮膜とする。皮膜の構造を顕微鏡で調べると,微細なリン酸塩結晶の集合体であることがわかる。一般にはこの結晶の大きさが細かいほど良い性質を示すので,処理浴の組成や添加剤に多くの処方が存在する。リン酸塩処理の効果の発見は1869年ロスW.A.Rossによる(イギリス特許)が,工業的な技術としての成立は1906年のコスレットT.W.Coslettのリン酸亜鉛を主成分とする処理法に始まる。パーカーC.W.Parkerはリン酸マンガンを主成分とする処理法を広く普及させたので,パーカライジングと呼ばれるようになった。
執筆者:増子 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…皮膜化合物としてはリン酸塩,クロム酸塩,塩基性塩,酸化物,硫化物などがあり,塗装の下地処理,塑性加工のための潤滑,耐食性の向上,表面の化学着色などに利用される。鉄鋼のリン酸塩処理phosphatingは,登録商標としてはパーカライジングとかボンデ処理と通称され,リン酸亜鉛,リン酸鉄の微小結晶をその表面に析出させ皮膜とする処理法である。アルミニウムに対する塗装下地にはリン酸亜鉛処理やリン酸クロム酸の混合処理などが利用されるが,アルミニウム本来のベーマイトAlOOH皮膜を改良利用する技術も盛んである。…
※「パーカライジング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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