日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒオウギ」の意味・わかりやすい解説
ヒオウギ
ひおうぎ / 檜扇
[学] Iris domestica (L.) Goldblatt et Mabb.
Belamcanda chinensis (L.) DC.
アヤメ科(APG分類:アヤメ科)の多年草。春に短い根茎から短剣状の葉を互生し、名のごとく扇形になり、ややねじれる性質がある。夏、葉の間から高さ約1メートルの茎を出し、頂上で分枝し、径5~7センチメートルで斑点(はんてん)のある橙黄(とうこう)色花を数個開く。花被片(かひへん)は5センチメートル、6枚で平開する。花期後に果実を結び、秋に熟すと裂開し、光沢のある種子が現れる。長い間落ちずに残る、この真っ黒な種子をうばたま(烏羽玉)、ぬばたま(射干玉)といい、黒いものや夜を形容する枕詞(まくらことば)となった。西日本から中国大陸に分布し、昔から庭の草花として植えられ、切り花栽培も盛んである。黄色花や桃色花のもの、ダルマとよばれる矮性(わいせい)品種が園芸品として栽培される。日当りのよい場所で堆肥(たいひ)を十分施して植え付け、3年ほどで株分けする。
[鳥居恒夫 2019年5月21日]