日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトツバタゴ」の意味・わかりやすい解説
ヒトツバタゴ
ひとつばたご
[学] Chionanthus retusus Lindl. et Paxt.
モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の落葉高木。高さ15~20メートル。葉は対生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ4~10センチメートル、長い柄がある。雌雄異株。5月、円錐(えんすい)状集散花序をつくり、多数の白色花を開く。花冠は長さ1.5~2センチメートル、深く4裂し、裂片は細い。雄花は雄しべ2本、雌花は雌しべ1本。果実は広楕円形で長さ1~1.5センチメートル、10月、黒く熟す。湿地に生え、愛知県、岐阜県、長野県、対馬(つしま)、および朝鮮半島、台湾、中国に不連続分布する。岐阜、愛知、長崎県の自生地は国の天然記念物として保護されている。公園木や庭木として植栽し、花を観賞する。中国では葉を茶の代用にする。名は、複葉のタゴ(トネリコの方言)の仲間と思い、単葉のタゴの意味でつけられた。もとは明治神宮外苑(がいえん)にあり、名前のわからない珍木ということでナンジャモンジャノキとよばれていた。ヒトツバタゴ属はこのほか、北アメリカ東部に1種ある。
[小林義雄 2021年7月16日]