ヒト科(読み)ヒトカ(その他表記)Hominidae

デジタル大辞泉 「ヒト科」の意味・読み・例文・類語

ひと‐か〔‐クワ〕【ヒト科】

霊長目分類群一つヒト亜科オランウータン亜科に分かれる。
[補説]ヒト亜科にはヒト属ほかゴリラ属チンパンジー属が含まれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒト科」の意味・わかりやすい解説

ヒト科 (ヒトか)
Hominidae

最近の主流な考え方では,ヒト科は,全ての人類(現生のヒトとそれに近縁な絶滅人類種,すなわち猿人+原人+旧人+新人)および現生アフリカ大型類人猿を含む分類群で,ヒト亜科Homininae/hominine(ヒトとチンパンジーを含む)とゴリラ亜科Gorillinaeによって構成され,オランウータン科Ponginaeおよびテナガザル科Hilobatidaeとともにヒト上科Hominoidea/hominoidを構成するとされる。以前の主流な考えでは,ヒト科は,全ての人類を含む分類群で,オランウータン科Pongidae(ショウジョウ科ともいわれ,大型類人猿のことで,オランウータン,チンパンジー,ゴリラを含む)およびテナガザル科とともにヒト上科を構成するとされる。これ以外にも,さまざまな分類が提唱され,研究者間で合意が得られていない。その原因は,以前から,チンパンジーとの共通祖先から進化した全ての人類を含む分類群を,ヒト科(Hominidae/hominidホミニド)とするか,それより下位のヒト亜科(Homininae/hominineホミナイン)とするか,あるいはヒト族(Hominini/homininホミニン)とするかの見解が違うからである。かつては,ヒトを特別視して,すべての人類を上位の分類群として類人猿から独立させていたが,最近では,遺伝学的な近縁性に基づき,できるだけ下位の分類群として扱う傾向がある。ここでは,最近の傾向に従い,すべての人類を含む分類群をヒト族とする。ヒト族の共通特徴は直立二足歩行と犬歯退化であり,ヒト属の特徴は長い脚による二足歩行の完成,器用に動く手指,小さな顔と歯,大きな脳,成長の長期化,道具の製作と使用である。ただし,ホモ・フロレシエンシスはこの特徴に当てはまらない。ヒト(種)の特徴は抽象的な思考能力と言語発達であり,それらが今日の文化を築いた。なお,ヒト属に関しては,ヒトの学名であるホモを用いて,ホモ属ということが多い。
化石人類
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知恵蔵 「ヒト科」の解説

ヒト科

チンパンジーとの共通祖先より後の全ての進化段階の人類を含む分類群を、ヒト科とするか、それより下位のヒト族とするかは見解が分かれる。両者とも、いわゆる猿人にあたるサヘラントロプス属(サヘル地域の人)、オロリン属(最初の人)、アルディピテクス属(地上のサル)、アウストラロピテクス属(南のサル)、パラントロプス属(副人)、ケニアントロプス属(ケニア人)と、いわゆる原人・旧人・新人にあたるヒト(ホモ)属を含む。ヒト属はホモ・ハビリス(器用な)、ホモ・ルドルフェンシス(ルドルフ湖の)、ホモ・エルガステル(働く)、ホモ・エレクトス(直立した)、ホモ・アンテセソール(開拓者)、ホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルク市)、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデル谷)、ホモ・フロレシエンシス(フローレス島)、ホモ・サピエンス(賢い)の9種を含む。現生のヒト(種)はホモ・サピエンスである。ヒト科(族)の共通特徴は直立二足歩行と犬歯の退化であり、ヒト属の特徴は、ホモ・フロレシエンシスでは例外もあるが、長い脚による二足歩行の完成、器用に動く手指、小さな顔と歯、大きな脳、成長の長期化、道具の製作と使用。ヒト(種)の特徴は抽象的な思考能力と言語の発達であり、それらが今日の文化を築いた。

(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒト科」の意味・わかりやすい解説

ヒト科
ヒトか
Hominidae

動物分類学上ヒトを含む分類名。ヒトの分類には種々の説があるが,ホモ・サピエンス (新人および旧人) ,ホモ・エレクトゥス (原人) ,猿人群を呼ぶアウストラロピテクス類 (猿人) をすべて包括してヒト科とする場合が多い。この考えに立つならば,直立二足歩行に関連する骨格上の諸特徴,すなわち寛骨の形態,大腿骨,脛骨の発達,足根骨,足骨の特殊化,頭骨の大後頭孔の方向などが最も重要な共通特徴となり,これに咀嚼器の退化傾向や脳頭蓋の拡大などが加わってヒト科の特性を形成する。

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