改訂新版 世界大百科事典 「ヒバリチドリ」の意味・わかりやすい解説
ヒバリチドリ (雲雀千鳥)
seed-snipe
チドリ目ヒバリチドリ科Thinocoridaeの鳥の総称。タネシギとも呼ばれる。全長17~28cm。この科には2属4種があり,南アメリカに分布し,アンデス山脈の雪線から南部の海岸の荒地にまですむ。一見サケイに似た鳥で,ずんぐりした体をもち,脚は短く,翼は長くて先がとがっている。くちばしは短くて円錐形である。体の上面は褐色で淡褐色の斑があり,のどは白色,灰色,または黒色。地上に生活しチドリのように速く走る。羽色が生息環境とよく似ているので発見しにくい。とくに地上に伏しているときにはまぎらわしい。食物は種子と葉で,まれに昆虫もとる。飛ぶことは多くないが,飛べば飛翔(ひしよう)は速く,タシギのようにジグザグに飛ぶ。また空中に舞い上がってディスプレーをする。巣は少しの材料を使って地上につくり,1腹3~4個の卵を産む。
オオヒバリチドリAttagis gayiは全長約28cm。上面は灰褐色で矢じり状の黒い斑紋があり,下面は淡黄褐色。上胸部には黒色横斑が密にある。エクアドル以南のアンデス山脈に分布する。シロハラオオヒバリチドリA.malouinusは前種とほぼ同大で,上面は褐色,のどは灰色で腹部は白い。南アメリカの南端に分布する。ノドジロヒバリチドリThinocorus orbignyianusは小さくて上面は褐色,雄は顔から胸が灰色,雌は褐色,のどは雌雄ともに白い。ペルー以南のアンデス山脈からフエゴ島に至る地域に分布する。コヒバリチドリT.rumicivorusはいちばん小さくて全長約18cm。体はくすんだ褐色で,雄はえりからのどに黒いネクタイ状の斑がある。南アメリカの西海岸やボリビア,アルゼンチンなどの内陸部に分布する。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報