改訂新版 世界大百科事典 「ヒラタグモ」の意味・わかりやすい解説
ヒラタグモ (扁蜘蛛)
Uroctea compactilis
クモ目ヒラタグモ科の蛛形(ちゆけい)類。日本全国および近隣諸国に分布する。扁平なクモで体長8~10mm。前体部および歩脚は橙赤色,後体部は白色で中央に独特な黒色の大きな斑紋があり,側縁から腹面にかけても黒色となるが,若齢若虫にはこの黒色斑紋がなく成長するにつれて現れる。樹皮や岩の割れ目,人家内外の壁の隅などに住居をつくる。住居は糸で紡がれた2枚の膜からなり,上の膜には食べかすやごみなどがしばしばつけられ,下の膜には住居から放射状に出る十数本の触糸が付着している。触糸に獲物が触れると,クモは住居からすばやく飛び出し,獲物のまわりをぐるぐる回って糸をかけてとらえ,それを住居内へもち込んで食べる。産卵は夏に住居内で行う。1個の卵囊内の卵数は40前後。漢方では本属のクモのつくる住居を壁銭といい,傷口に張って血止めに利用したという。本属のクモは世界に約20種いるが,日本には本種のみ生息する。
執筆者:松本 誠治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報