ビオラル鉱(読み)びおらるこう(その他表記)violarite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビオラル鉱」の意味・わかりやすい解説

ビオラル鉱
びおらるこう
violarite

鉄とニッケルの複硫化物でいわゆる硫スピネル族鉱物の一員。結晶面のある個体の報告はない。深熱水性鉱脈に産し、針ニッケル鉱の分解物として生成されることが多い。日本では兵庫県養父(やぶ)郡大屋町(現、養父市大屋町)大屋鉱山閉山)、大分県大野郡三重(みえ)町(現、豊後大野(ぶんごおおの)市三重町)若山鉱山(閉山)などで針ニッケル鉱の分解物をなして産したことが知られている。

 共存鉱物は磁硫鉄鉱、針ニッケル鉱、黄銅鉱ペントランド鉱磁鉄鉱石英など。同定は明瞭(めいりょう)に紫色を帯びた灰色の外観。ただし化学組成によってはこの色がほとんどないことがあり、針ニッケル鉱の針状のものが共存していればわかりやすいが、単独のもしくは他の硫化物と塊状集合をなすような場合、識別は困難である。命名はラテン語のすみれ色(violaris)に由来する。単成分に近い組成のものは研磨面でこの色が観察される。

加藤 昭]


ビオラル鉱(データノート)
びおらるこうでーたのーと

ビオラル鉱
 英名    violarite
 化学式   FeNi2S4
 少量成分  Co,Cu
 結晶系   等軸
 硬度    4.5~5.5
 比重    4.79
 色     菫灰
 光沢    金属
 条痕    暗灰
 劈開    三方向にほぼ完全
       (「劈開」の項目参照

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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