改訂新版 世界大百科事典 「ビヤーサ」の意味・わかりやすい解説
ビヤーサ
Vyāsa
四ベーダを編纂し,《マハーバーラタ》を著述し,諸種のプラーナをも著したとされるインドの伝説上の聖仙。名前は〈編集する〉の意のサンスクリットvy-asに由来するといわれる。ほかにも彼に帰される書物は多いが,《ヨーガ・スートラ》に対する最古の注《ヨーガバーシャ》(6世紀)などが有名。しかし《マハーバーラタ》にその物語の展開と深くかかわる形で語られる,その書の著者としての伝説が本来のものであり,他の業績はこれに付加されたものといえる。彼は聖仙パラーシャラの息子であり,百王子の父ドリタラーシュトラと五王子の父パーンドゥの実質的父親にあたり,パーンドゥ五王子のひとりアルジュナに無敵の武器の入手法を教えるなど多くの助言をしている。戦争が終わり息子たちも死に絶えた後,彼はその経緯のすべてを物語る自作の詩を弟子のバイシャンパーヤナに伝え,その朗唱を模倣する形で吟唱詩人のウグラシュラバスが現形の《マハーバーラタ》を伝えたとされている。
執筆者:高橋 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報